第53章 謎と疑惑と真実
「おーい!!誰か!誰でもいい!大きな布を調達してきて!今すぐにだ!あの壁にいる巨人に光を当ててはいけない!早急に取りかかれ!!」
すると、それと同時に馬が到着し、水晶で身体を覆ったアニは、強固なワイヤーで縛られ連れて行かれた。
すると……
「答えて下さい!!あの2体の巨人は何なんですか?」
一刻を争うという時にも関わらず、憲兵団の新兵が怒鳴り込んできた。
「今説明できる時間は無い!下がってくれ!」
「住民に多数の被害が出てる!死人も出た!なぜここに巨人がいて戦闘が行われてしまったのか…この責任は誰が負うのですか!?」
きっと飲んだくれの上官から護送団の警護を任された新兵達だろう。
壁内でいきなり巨人が出現して戦闘になるなど、彼等にとっては想像すらできなかった事態だ。
だが、今はこんなのにかまっている暇はない。
「新兵よ…君たちでは話にならない!上官を呼んできなさい…酔っ払ってなければな?」
「クソッ…」
腐った組織の割には、染まらず正義感のありそうな新兵だ。
しかしそれどころではなかったモブリットは、相手にできないとあしらうと、自分も急いで持ち場に戻った。
そして夕刻。
急遽かき集められた布を即席で縫い合わせ、壁に空いた穴を覆うと、風が吹いてもはためかない様しっかりとワイヤーで固定した。
「とりあえずこんな所かな……」
縦と横、しっかりと布は固定され光は入らない。
「本格的な補修作業は日没後に行います。とりあえず速乾性の高い目地材で薄く固めていって、周囲の脆くなった部分も同時に進めていきます。」
「うむ…いいだろう……住民はこれを見ただろうか?」
壁の上から膝をついて覆われた布を見つめるニック。
「付近の住民は戦闘後より今に至るまでこの辺りから遠ざけたままですが、完全に隠し通せた確証はありません。」
「そうか……」
ここまでさせておいて何も話しだそうとしないニックにハンジは焦れ、問いかける。