第53章 謎と疑惑と真実
「…ハンジさん!!だって…こんなの…こんなのあんまりです……!」
女型の巨人を捕えて一矢報いたかったクレア。それでしか、自分のこの悲しみを晴らす事ができないと思っていた。
何が何でも捕えたかった。
ペトラの笑顔が、エルドの優しい眼差しが、ギュッとクレアの胸を締め付ける。
悔しくやるせない結果に泣きながらブンブンと首を振ったが、そんな姿にハンジは厳しくもクレアの頬を一発叩いた。
ーバチンッ!!ー
「あっ……!!」
「分隊長!!」
「いい加減にしなさい!!新兵もいるのにみっともない事するな!嘆いてる暇があったらこのワイヤーでネットを作ってこの水晶ごと縛る!早く!!」
「ハンジさん……」
クレアは叩かれた頬をてのひらで押さえながらハンジを見つめる。
「いつ目を醒ますか分からないこの子を地下に運ぶ!!今はそれだけを考えなさい!!みんなもいいね?!急いで!!」
「は…はい……すみませんでした……」
クレアは正気に戻ろうと、右手の拳で涙を拭ったが、刃の破片が飛んで傷ついた手からは血が流れ出し目の周りを真っ赤に染めてしまった。
必死に泣き止もうとするクレアの姿にハンジの胸がチクリと痛む。
「…クレア…手荒な事してゴメン…気持ちは分かる。だけど今は兵士としての立場を忘れないで…」
「はい……」
歯を食いしばり、なんとか涙を止めようとするクレアにハンジがため息をつくと、ズボンのポケットからクシャクシャになった、決して衛生的とは思えないハンカチを取り出す。
その見るからに汚いハンカチでハンジはかすれた血のついた目元を拭いてやった。
「ほら…無茶するから。」
「す、すみません…!!」
そしてそのハンカチでクレアの右手を包んで縛ると、背中をポンと叩いた。
すると、冷静さを取り戻したクレアは皆の後に続きワイヤーでネットを作り縛る作業に取り掛かった。
「ふぅ………」
らしくもなく取り乱したクレアを正気に戻したハンジは、重いため息を吐きながら必死にネットで縛る兵士達を見守りこれからの事を考える。