第53章 謎と疑惑と真実
ーガキンッ!!ー
「う、嘘でしょ……?!」
アニを覆っている水晶を思い切り刃で叩くが、どんなに力を入れても刃の方が粉々に砕けてしまう。
「傷1つ…つかない…!なに…よ、コレ……」
壁外調査ではかつてない多くの犠牲者をだし、一度は捕えた女型の巨人。
しかし、予想だにしなかった“謎の叫び”によって証拠も何もかも残さず逃げられてしまった。
多くの出資も叶わず多くの犠牲をだし、野次を浴び、絶望のどん底にあった調査兵を救ったのが今回のアルミンの考案による作戦だった。
これが希望であり、最後のチャンスだったのだ。
それなのにこんなわけの分からない水晶で身を守って黙秘などあんまりだ。
クレアの頭の中は失った大事な仲間の事でいっぱいだった。
アニに対しての怒りや恨みが沸々と湧き上がり、頂点にまで達すると、感情をつかさどる大事な何かが、音を立てて崩れ落ちた。
「あ、あんまりよ!!あんなに沢山の人を平気で殺して、捕まりそうになったらこんなモノ使ってまで逃げるなんて!!卑怯よ!出てきなさいよ!!私が!私が相手になるからでてきなさいよ!!あんたのせいでペトラさんが…エルドさんが……オルオさんがグンタさんが……優秀で勇敢な兵士達が死んだのよ…責任を…負けを認めてとりなさいよ!」
ーガシン!ガシンッ!ガシンッ…!!ー
クレアは何度も刃を入れ替え叩きつけるが、無残にも粉々になっていく。
そして、破片がクレアの小さな手に、頬に飛び散り容赦なく傷を付けた。
「クレア……」
クレアが大勢の前でここまで怒りをあらわにするのは初めてだ。
皆クレアの悲痛な叫びに何も言えなくなってしまう。
「クレア!落ち着きなさい!今はこんな事をしてる場合じゃない!!」
皆黙ってその様子を見ていたが、クレアの手から流れ出る血に、ハッと我に返ったハンジが慌てて止めに入った。