第53章 謎と疑惑と真実
「は、早い……」
クレアは持ち前の身軽さを武器に先陣を切って壁を壁を登るが、間に合うかどうかは五分五分。
これをこえられてしまえば反対側は平地。
立体機動での戦闘は不利になってしまう。
「クレアー!!お願い止めて!!」
下からハンジが叫んでいる。
何がなんでも止めなければ。
だがクレアが歯を食いしばって再び飛び上がろうとした時だった。
「…………えっ!!」
物凄いスピードで飛び上がる兵士がアニに向かっていくと、思い切りブレードをふるい、壁を掴んでいた指を一気に切断した。
「ミ、ミカサ…?」
上を見上げると薙ぎ払うようにアニの右手を切断したミカサ。
そして下を見ると、巨人化したエレンとアルミンの姿。アニの逃亡を阻止しようと、エレンは残る力を振り絞ってミカサを投げ飛ばした様だった。
間髪入れずに左手の指も切断すると、ミカサはアニの額を足でトンッと押した。
「落ちて……」
アニは巨大樹の森でボロボロになったエレンを自分の目の前で連れ去ろうとした憎き相手だ。
冷たく言い放つミカサに、もう同期の情など残ってはいなかった。
力を使い果たし、地面へ叩きつけられた衝撃で、アニはもう再び立ち上がり暴れだすことはなかった。
エレンが押さえ込み、居合わせた調査兵によって慎重にうなじを削いでいくと、人間が入っている。
アニで間違いない。
しかしエレンがアニを取り出そうとすると……
ーシュウウウウゥ……ー
「な、なに……?」
おびただしい量の水蒸気が上がり、エレンが掴んでいたアニの身体は透明な水晶の様な物で覆われてしまった。
その中で眠ってる様に見えたアニはユニコーンの紋章のついた憲兵団の平服に立体機動装置をつけていた。
やはり、エルヴィンが言ったように身に纏うもの1つとしてエレンを基準にしてはいけなかった。
となると、超大型巨人の中身も、水蒸気に紛れて立体機動で逃走したとみて間違いないだろう。