第52章 雨
「兵長…大丈夫ですか…?そんな、負傷されていたならどうしてもっと早く言って下さらなかったのですか?」
処置は自分でもできる事をリヴァイは知っている。
だからこそ何故言ってくれなかったのだと少し涙声になりながら訴えた。
そんなやりとりに外野の2人も気不味くなってしまう。
「…別に隠していたわけではい。だが、それどころではなかっただろう?」
「そ、それは……」
確かにそれどころではなかった。
リヴァイ班の班員の死に、心を痛めていたリヴァイ。
それを何とかしようと荒療治にでて、その後は……とてもここでは言えない展開となり、今に至る。
そんな事を言われてしまうと、もう何も言い返せなくなるクレア。
それだけではなく、先程の事を思い出しては段々と顔が赤くなるクレアに、ますます外野の2人は目のやり場に困った。
特にエレンは“それどころではなかった”というワードに必要以上に反応してしまい、ドキドキと心臓が煩くなってしまう。いつぞやの馬具倉庫での事を思い出してしまったのか、自分の意思とは正反対に艶めかしいクレアを妄想してしまい、頭は軽くパニック状態だった。
「お待たせしましたリヴァイ兵長、終わりです。これで様子をみましょう。外は雨ですし、くれぐれも人馬転にはお気をつけ下さい。」
だが、医師の機転のきいた言葉により、その場の雰囲気は何とか元に戻ったようだ。
「あぁ…ダスゲニーはそんなヤワじゃない。大丈夫だ。」
「あ、あの…兵長にエレン。外は悪天候ですので、どうかお気をつけてお戻り下さい。」
「は、はい…!クレアさんもお疲れ様です。壁外では応急処置をありがとうございました。」
「じゃあな…また離れ離れだからな…1人で我慢できなきゃ……」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!もう大丈夫です!何でもないですから!!」
「そうかよ…」
悪い笑みを見せると、リヴァイはエレンを連れて出ていった。