第52章 雨
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風呂を終えたクレアは、すぐに部屋に戻って休んでも良かったのだが、医務室に寄って手伝いがないか確認してから休むことにした。
リヴァイとエレンはもうとっくに古城に戻る為兵舎を出てしまっただろう。
廊下の窓にはどしゃ降りの雨が容赦なく降り注ぎ、耳障りな音を立てている。
真っ黒な分厚い雲に覆われて月明かりもない。
ランプの火が消えてしまっては先が見通しがつかず危険だ。
クレアは2人の帰路に事故がない事を祈りながら医務室の扉をノックした。
「先生…??クレアです。お手伝いできることはもうありませんか?」
ノックをし、そっと扉を開けると、そこには椅子に腰掛けているリヴァイに、雨具の用意をしているエレン。
そして、医師がリヴァイの左脚に包帯を巻いていた。
「クレア君か?わざわざ来てくれたのかい?だけど、もうこっちは大丈夫だから引き取って休んでもらって構わないよ。」
医師はそう言うが、クレアはそれどころではない。
何故リヴァイが医務室で医師の手当を受けているのだ。
さっき執務室にいた時には怪我をしている様には見えなかったため、頭の中は疑問符だらけだ。
「兵長…?いったいどうされたんですか!?」
「チッ………」
言っても心配をさせるだけ。
言わなくて済むなら言わずにいようと思ったリヴァイであったが、見つかってしまってはしょうがない。
小さく舌打ちすると、仕方なく脚の負傷を正直に告白した。
「エレンの馴染みと一緒に女型の巨人とやりあってる時に負傷した。骨には異常はないが、しばらくは訓練できないそうだ。」
「えぇ…?!」
今の今までそんな素振りを見せなかったため、驚きを隠せなかった。
医師の手当の様子をみると、骨折こそしてないが、包帯でキツく固定をされている。
今まで数々の怪我を処置してきたクレアが見れば、負傷具合など簡単にわかってしまう。
リヴァイの言う通り、左脚の回復にはしばらく時間がかかるだろう。