第8章 迷える想い
過酷な調査兵。特にリヴァイは兵士長として、また特殊部隊特別作戦班の班長として部下の命を預かっている。
人類最強のリヴァイとて、プレッシャーがまったく無いわけでは無い。
側で心の拠り所となる存在があってもいいと、エルヴィンは前々から思っていた。
だが、あのリヴァイのことだ。
エルヴィンや、ハンジが進言したところで、まともに取り合わないだろう。
自身で気づき、自身で求め、自身で選択しなければ、乗り越えられない問題だ。
エルヴィンは、可愛いクレアを欲しいと想う気持ちと、リヴァイのために側にいてやって欲しいと想う気持ちがもどかしく葛藤していた。だが今は後者の気持ちのほうが強いように思える。
クレアの存在が、リヴァイにとって、何かよいきっかけになってくれればとエルヴィンは切に願った。
ークレアは赤くなってしまった顔をゴシゴシと擦りながらデイジーの手入れをしていた。ー
不意打ちの褒め言葉など慣れていないため、余計にドキドキしてしまった。
すると……
「おーい!クレアー!」
ハンジたちがやってきた。
いつもは満面の笑みでかけよるが、今のクレアは不機嫌極まりない。
「あれー?クレア?ご機嫌ナナメかな?」
ハンジはニコニコと、膨れたクレアの頬をつんつんとつついた。
「もぅぅぅぅ!ハンジさん!誰から聞いたのかはだいたい想像つきますが、あんなに人がいるところでからかわないで下さい!フレイアに昨日のことバレちゃうところだったんですよ?」
クレアはハンジの肩のベルトを両手で掴むとグイグイと前後に揺らして講義した。
「アハハハ、ゴメン!ごめんってば!もう気をつけるからさ!」
ハンジは軽く両手を上げて降参するが、あまり反省の様子はうかがえない…
「お願いしますよ……」
「でも不思議だよなぁ。ただベッドに並んで寝ただけで、リヴァイまで、香りなんて移るかなぁ……特にクレアは強く香るほどつけてないのになぁ。」
ハンジはクレアのうなじあたりをスンスンかいだ。
それはクレアも感じていた。ただ並んで眠っただけで移り香なんてするものなのだろうか……
すると、ハンジがまた悪い顔になり、クレアに耳打ちをした。