第52章 雨
ーコンコンー
クレアが受け取ったネックレスをしまってエレンの様子を見に行こうとした時、執務室の扉を誰かが叩いた。
「リヴァイ。私だ…」
「エルヴィンか……」
やってきたのはエルヴィンだった。
「エレンが目を覚ましたそうだ。疲労も回復していて馬にも乗っても良いと、医師から連絡が入った。」
「グッスリ眠って体力回復とは…いいご身分だな。」
リヴァイは片付かなかった書類をまとめていると、エルヴィンが怪訝な顔で問いかけた。
「リヴァイ?……それに、クレア?何故君達はそんなに濡れてるんだ?」
エルヴィンの疑問ももっともだろう。
外はどしゃ降りの雨だが、雨が降り出したのは兵士が皆トロスト区の兵舎に戻ってきてからだ。
しかし、目の前の2人はこの雨の中傘もささずに外出してきた様な姿だ。
そしてクレアの髪の毛はほどけて緩いウェーブがかかっている。
どうしたら髪の毛がほどけて、こんなにずぶ濡れになれるのか、エルヴィンは心底疑問に思った。
「あ、あの…団長…これは……」
「なんだよエルヴィン。このどしゃ降りの雨の中水遊びをしてたとでも思ってるのか?」
「いや…そういうわけではないが……」
「見て分からないのかよ、“やんごとなき事情”だ。そこは空気読め……」
「そうか…」
はっきり言ってエルヴィンには理解不能だったが、今は時間がない。
“やんごとなき事情”とやらで納得するしかなさそうだった。
「クレア?君はまだ立体機動装置をつけていたのか?もう仕事が終わっているのなら早く整備を済ませて休みなさい。」
「は、はい!!」
クレアはエルヴィンとリヴァイに敬礼をすると、急いで執務室から出ていった。
「…………」
クレアは立体機動装置の点検を終わらせると、自室に向かって歩いていた。
エレンの様子を見に行こうと思ったが、医師がもうエルヴィンに容態を伝えていたため、その役目は不要だった。
ひとまずこの濡れた服と身体をどうにかしなければと、クレアは部屋に戻ると大急ぎで風呂の支度を始めた。