第52章 雨
右手の拳をそっと開くと、目に飛び込んできたのは薄いピンクのキレイな石。
それと、細長いチェーンだった。
これは、エルドが今は亡き親友フレイアに贈ったもの。そして、それを形見としてエルドが肌見離さず付けていた物だ。
それが何故自分の手に。
「兵長…これは…いったい……」
「班員の遺体は、俺が確認したと言ったよな?エルドも、グンタも、オルオも、ペトラも、ほぼ即死状態だった。心臓の動いてる者は1人いなかった。遺体を連れて帰ることも不可能。だが、エルドの遺体の前に行くと、偶然だが…それを見つけた。」
「…………」
「まぁ、それはエルドがフレイアに贈った物だから、普通ならそのまま送ってやるべきだろうと思った。でもその時の俺は少し違う事を考えたんだ…」
「…そ、それはいったい……」
「エルドとフレイアが調査兵として勇敢に戦った証に…2人の戦果を形あるものとして残しておきたいと…そう思ったんだ。2人を知ってる者なら誰でもいい。誰かの元で大切に持っていてもらいたかった。」
「…そんな事が……あったのですね……でもそんな大切な物をどうして私に?」
「お前がフレイアと1番親しくしてたからな。まずはお前に渡そうと思った。だが、持っているのはクレアでなくてもいい。お前が自分が持っているよりふさわしい相手がいると思うのならば、渡してやってくれ。誰の手に渡ろうと、お前の決めた相手ならば文句はないからな……」
「兵長……」
リヴァイの話を聞き、もう一度自身の手のひらにある物を見つめる。
柔らかく光るピンク色は、いつも明るく眩しかったフレイアを…そして、いつも優しくて親切だったエルドをすぐに思い出させてくれる。
リヴァイの言う通り、これは2人が勇敢に戦った証として残しておきたいと、クレアも強くそう思った。
「わ、分かりました。私も…そう思います。なのでひとまずは私が……預かっておきますね…」
そう言うとクレアは両手でギュッと握りしめて、2人の安らかな眠りを願った。