第52章 雨
リヴァイは持っていたハンカチで汚してしまったクレアの胸元を拭き取ると、乱れた下着とシャツを直してやった。
「あ、ありがとうございます……」
「ほら…」
そして、放り投げてしまったジャケットも手渡すが、びしょ濡れだ。
クレアはベルトと立体機動装置を付けると、濡れたジャケットはそのまま持っていこうとしたのだが、すかさずリヴァイの指摘が入る。
「おい、ジャケットは着ていけ。」
「え?でも濡れてますし…別に寒くもないのでいいです。部屋に戻ったらすぐにお風呂へ行きますから…」
「駄目だ!!」
「へ…へいちょう…?!」
眉間にシワを寄せて明らかに不機嫌そうだ。
「ここを見てみろ…」
「……??……あっ!!」
リヴァイが指さしたのはクレアの胸元。
クレアはスッと顔を下に向けると、見えてきたのは、濡れた白いシャツから透けているオレンジ色のブラジャーのレース。
リヴァイの言いたかった事を理解すると、クレアはすぐに濡れたジャケットを羽織った。
「す、すみません……」
「ったく…無自覚鈍感奇行種が…ちゃんと気をつけろよ。」
「は、はい……」
ジャケットを羽織ったクレアはすぐに執務室を出ようと身支度を整える。
「兵長、私部屋に戻る前にエレンの様子見てきますね。もしかしたら起きてるかもしれないので……」
「クレア、待て……」
出ていこうとするクレアを呼び止めたリヴァイは、ズボンのポケットからある物を取り出すと、そっとクレアの手に握らせた。
「???」
チャリっという金属音と共に自分の手の中に入れられた物。クレアは中身がサッパリ分からず、リヴァイの顔と、自身の拳を交互に見ながらそっと手を開いた。
「あっ……これは………」
それは、クレアにも見覚えのある物だった。