第52章 雨
敵は巨人であり、人間でもある。
だが状況は変わらず常に情報不足で調査兵団は大劣勢。
しかし、今考えるべき事はソレではない。
クレアは全身が雨で濡れた事を確認すると、目元を擦って涙を拭ってからリヴァイの執務室に戻った。
「………っ!!戻ってきやがったな…いったい何をしていた。」
窓の外を見渡してクレアを探していたリヴァイは上から降ってくるびしょ濡れのクレアの行動が分からず眉間にシワを寄せている。
「兵長…イスにかけて下さい。」
「あぁ?!いきなり何を言い出す……」
分からない……
リヴァイにはクレアの考えている事が全く分からなかった。
ードンッ!!!ー
わけが分からないままリヴァイはクレアに肩を押され、イスに尻もちをついてしまう。
「おい!!いったい……」
「兵長!!……ご無礼お許し下さい!!」
「はぁ?!………っ!!」
無礼を許せと言ったクレアはびしょ濡れの身体で思い切りリヴァイを抱きしめた。
「お、おい……?!」
「動かないでください兵長…このまま…このままです……」
「………!?」
突如降り出した雨は、クレアの全身を冷たく濡らし、その足元にはポタポタと瞬く間に水溜りができていく。
当然だがこんなびしょ濡れのクレアに抱きしめられたリヴァイの顔も、上半身も、その水分を吸い込み共に濡れていく。
いったいクレアは何がしたいのだ。
「おい!いい加減にしろ…!いったい何がしたいんだ…」
リヴァイはクレアの胸元に顔を埋めたまま意見をするが、返ってきたのは震えた声だった。
「兵長が……何も仰らないからです!!!私にはこうして差し上げることしかできません!だからせめて…このままでいて下さい……兵長を濡らしているのは、この雨だけですから……」
今にも消え入る声でそう呟くと、クレアはより一層リヴァイをきつく抱きしめた。