第52章 雨
しかし…
ーコンコンー
「……!?」
「あの兵長…クレアです……」
クレアの方からやってきてしまった。
「入れ……」
きっとエレンの報告に来たのだろう。
仕事の話だ。部屋に入れないわけにはいかない。
リヴァイは入室の許可をすると、扉は静かに開き、愛しくてたまらないクレアが少し遠慮がちに入ってきた。
「あ、あの…お忙しい所すみません…エレンの容態について報告です。」
「あぁ……」
「大きな外傷はありませんが疲労が激しく、馬に乗って古城に戻るのは、少し休んでから…との事でした。」
「了解した……」
「………」
リヴァイは書類に目を向けたまま、クレアの方を見ようとせずただ無愛想に返事だけをした。
その様子に胸が痛くなるクレア。
いつもなら無事の帰還に安堵をして抱きしめてくれるリヴァイが、今は自分と目も合わせようとしない。
きっとそれだけペトラ達の死がリヴァイにダメージを与えてるのだろう。気持ちの整理もできてないはずだ。
自分だって彼らが亡くなってしまった事をうまく整理できていない。
あんなに頼もしい精鋭の兵士達が何故。
あんなにも気さくで優しかった彼らが何故。
そんな気持ちで一杯だったが、リヴァイの悲しみの深さはそれ以上だろう。
「あの…兵長……」
「なんだ…?報告は了解した…お前も早く立体機動装置の点検を済ませて休め……」
リヴァイは冷たくクレアを突き放す様な言い方しかできない自分に腹を立て、余計に苛立ちが増してしまう。これでは悪循環だ。
きっとクレアは自分の冷たい物言いに酷く傷ついてるはずだ。
だが、この負の感情に任せて乱暴な真似をしてしまうよりはマシだ。
さっさと出て行ってくれ…
リヴァイは奥歯を噛みしめながら心の中で呟いたのだが……
クレアはリヴァイが予想もできない場所から出て行った。