第8章 迷える想い
「掃除の件はハンジから聞いていたんだ。もちろん理由もね。今までずっとリヴァイは側に人を置きたがらないやつだったから不思議に思っていたんだ。掃除の件といい、馬の調教の件といい、昨夜のことといい、リヴァイは君のことを特別に想ってる様だね。」
「団長!馬のことも知ってたんですか?」
「ハハッ、私はこの調査兵団の団長だ。知らないことはない。」
エルヴィンは意地悪に笑った。
だが、エルヴィンは知っていたのだ、あの日、リヴァイが地下の資料室のカギを持ち出していたことを。
「どういう訳か、リヴァイは兵士長という地位でありながら側近や副官を置かないんだ。それにあの潔癖すぎる性格も影響してか、恋人もつくらない。想いを伝えてくる女性兵士も結構いるんたが、見向きもしないんだ。」
「…………」
兵長はそんなに女の人からモテていたのか……
「でも、君は違うようだね。リヴァイは君に対してどこまで自覚してるかはわからないが…クレアはごくに自然にリヴァイの内側にいるように見える。あいつは強いが、ただただ側にいてくれるだけの人間も必要だ。クレアがそうなってくれると嬉しいんだがな。」
「………へ、兵長は、私のことを、そんな風には見ていないと…思います……奇行種って変な呼び方で呼ばれますし…」
「じゃあクレアは?クレアはリヴァイのことをどんな風に思っているのかい?横暴で、逆らえない上官かな?」
「そ…それは…」
……横暴。そう。
兵長はいつだって横暴で、命令口調で、俺様で、変な呼び方で呼んで…。
でも、でも兵長が自分にしてきた事はそれだけであっただろうか……
「……………、あ、あの……」
クレアは言葉につまってしまった。
「すまない。答えにくい質問をしてしまったね。いいんだ。君さえいやでなければ今まで通り、リヴァイの側にいてやってくれないか。」
「は、はい。それはかまいませんが……」
「ありがとう。それともう1つ、お願いしてもいいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「そこの引き出しが溢れてしまう前にまたたずねてきてくれると私は嬉しいんだが。」
エルヴィンは焼き菓子の入った引き出しを指した。