第51章 第57回壁外調査
「じゃ、じゃあ、エルヴィンは女型の巨人の中身がまだ森の中でエレンを狙ってるって思ったから補充させたって事?!」
「……そうだ。」
「…そんな…兵長……」
女型の中身がまだ生きて森の中にいる。
そんな事、想像すらできず、また考えたくもなかったが、実際に“巨人を呼び寄せ自身を食わせる”などというとんでもなく予想外な事が起きたのだ。
エルヴィンの言う通りこちらも考えを飛躍させていかないと到底敵わないだろう。
しかし、今はリヴァイがエレン達を無事に連れて戻ってくる事を祈るしかない。
クレアは黙ってデイジーを走らせた。
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巨大樹の森を西方向に向かって抜けると、森の外で待っていた兵士達が信煙弾に従い既に集まっていた。
クレアは帰還の準備が整うまで負傷者の手当をと思ってデイジーから下りたが、治療を必要とする様な兵士が見当たらない。
「………」
しかし、カラネス区を出発した時と比べると明らかに人数が少ない。
きっとここにいない者は、皆あの女型の巨人を討伐しようと果敢に挑み散っていったのだろう。
自分の出番がない理由にゾワゾワと吐き気の様なものが込み上げてきたが、ふと正面をみたら頭に包帯を巻いている兵士がいた。
「あれ、アルミン?!頭、どうしたの?怪我したの?」
「クレアさん…」
頭に包帯を巻いていたのはアルミンだった。
隣にはジャンがいた。
「クレアさん……こいつ、女型の巨人に攻撃されて派手に落馬して頭打ったんです。」
「落馬?頭打った?大変…ちょっと見せてね…」
「は、はい……」
クレアは巻かれた包帯をとると、アルミンのこめかみあたりに小さな切り傷を見つけて、消毒をしてから新しい包帯を巻いてやった。
「傷はそんなに深くないから大丈夫だけど…馬には乗れる?頭を打ったのは先生じゃないと診断ができないから…えと、アルミンの班の班長って誰だっけ?」
「ネス班長は……死にました……」
「そ、そんな……」
クレアはアルミンの傷の具合を報告しようとしたのだが、アルミンの班長はすでに死亡してしまったいた。