第51章 第57回壁外調査
あれだけの出資金を投資してもらったのだ。
作戦失敗など絶対に許されないが、今このタイミングを逃せば生きて帰還する事はできないだろう。
もうこれ以上の犠牲は出せない。
「審議所であれだけ啖呵切った後でこのザマだ…大損害に対し実益は皆無。このままのこのこ帰った所でエレンや俺達はどうなる?」
「帰った後で考えよう。今はこれ以上損害を出さずに帰還できるよう尽くす。………今はな。」
目の前には、女型から上がった蒸気に群がる巨人の大群。
女型は14m級はあったはずだ。
こんな数分で姿形が無くなってしまうとは、満腹中枢はいったいどんな構造になっているのだ。
「帰還するんだろ?俺の班を呼んでくる。奴ら…そう遠くに行ってなければいいが…」
リヴァイは女型を捕えた後、すぐに班員とは別行動をとっていた。壁を壊した巨人がエレンを狙ってる可能性が高かったため、エルドに指揮を任せてかくまっていたのだ。
帰還をするなら呼びに行かなくては。
「待てリヴァイ…ガスと刃を補充していけ。」
群がる巨人と白く曇った蒸気を見つめていたエルヴィンは何かを感じたのか、ガスと刃の補充を命じた。
「時間が惜しい、十分足りると思うが…なぜだ?」
「命令だ、従え。」
「…了解だエルヴィン、お前の判断を信じよう。」
リヴァイは急いで補充を済ませると、ハンジの隣にいたクレアを見つけて立体機動で飛んできた。
「へ、兵長……」
「帰還だ…だがカラネス区へ着くまで油断はするなよ…」
「は、はい……」
頭、顔、腕、手、胸、腹、脚……
1つ1つ見つめて怪我が無い事を確認すると、リヴァイはクレアの頭の上に片手をポンと置いた。
そして名残惜しそうにゆっくりと手を離すと、リヴァイは自分の班員を呼びに行ってしまった。
「油断するなよ…だってぇ!ここは壁外だっつーの!いちゃつくのは帰ってからにして下さーい!」
「ハンジさん!声が大きいです!!」
妬いたハンジがリヴァイに文句を言うが、リヴァイはもう既に立体機動で遥か遠くだった。