第51章 第57回壁外調査
多くの犠牲を払い、やっと仕留める事ができたのだ。
それに多くの犠牲だけではない。
この兵器を開発させるために、莫大な資金が必要だったのだ。
調査兵団はいつだって資金不足。
必ず成果を出す事を条件として、出資者から多額の投資を受けた。しかし、それだけでは足りずに、エルヴィンが自ら動き、その身体を使っての資金調達も何度もした。
それは、性も根も尽き果てる程に。
それでやっと叶った生け捕りだったのだ。
何が何でも死守したかった。
しかし、女型の巨人に向かってくる巨人の数は10や20なんてものではない。
大小合わせて100体以上はいるだろう。
そんな中に飛び込み、女型を死守しようとするが切っても切っても切りがない。
明らかにこの場にいる調査兵の数と、女型に食らいつく巨人の数には圧倒的な差があった。
5年以上、この調査兵団で生き残ってきた兵士達ですらこの数を止めるのは不可能だった。
戦闘も虚しく、どんどん女型の巨人の身体は食いちぎられその形を消していく。
もうここまでか…
「全員一時退避!!!」
「オイ…エルヴィン!!」
「やられたよ……」
「…何て面だてめぇ…そりぁ……」
やられたと言ってる割にはエルヴィンの顔はそこまで落胆している様には見えなかった。
「敵は全てを捨て去る覚悟があったと言う事だ。まさか……自分ごと巨人に食わせて情報を抹消させてしまうとは……」
予想外の番狂わせに、落胆を通り越して天晴だ。
エルヴィンの顔はそんな表情だった。
「総員撤退!!巨人達が女型の巨人の残骸に集中している内に馬に移れ!荷馬車は全てここに置いていく!巨大樹の森、西方向に集結し陣形を再展開!カラネス区へ帰還せよ!!」
まさかの作戦失敗に、皆絶望し、悔しさで歯を食いしばっている。
だが、あれだけの数の巨人にも関わらず標的が女型の巨人だったため、ここにいる兵士達は全員無事だった。