第3章 衝撃的な出会い
訓練兵団でもクレアは1人だった。
でも、そんな事が気にならないほどクレアは充実していた。
学校のつまらない授業や家事の手伝いなどとは違い日々高いスキルと高い評価が求められる兵士の世界。
体力トレーニング、対人格闘、馬術練習、どれもが初めてのことだったが、もともとストイックに打ち込むのを得意とするクレアにとっては、うまれて初めてのめり込むものができたため、毎日が興奮の連続だった。
朝は、1人早起きをし走り込み、訓練終了後はキース教官の許可をとり馬術の居残り練習に精をだした。
クレアに割り当てられた馬は前の乗り主が高身長だったため、150センチ程の小柄なクレアが乗ると、合図を出す踵の位置が前の乗り主と違うせいか、最初はなかなか命令が思う通りに伝わらず、訓練がうまくいかなった。
馬術は馬との信頼関係が大事だ。
居残り練習ではお互い理解しあえるように時間をかけて根気強く調教を続けた。
朝も夕方も自主練習の毎日。
夕飯を食べて風呂に入れば、身体は勝手に睡眠を求めてしまう。
訓練兵は6人部屋だったが、クレアは談笑する他の訓練兵の輪に入る余裕もなくいつも消灯時間前にはバタンと先に眠ってしまっていた。
友達と呼べるものができなくても何も問題はなかった。毎晩眠る前には1日の訓練に満足し、自然と口角があがったまま眠りにつけていたのだから。
夏になると本格的に立体機動装置の訓練が始まった。
座学や基礎訓練などで、勉強はしていたが、実際に装着して使った時のあの感動はとても言葉では言い表せなかった。
ワイヤーとガスを使い、飛び上がる瞬間、空に手が届きそうな、雲を掴むことができそうな高揚感にクレアは酔いしれた。
訓練兵団での日々は両親の死を乗り越えて、クレアの中でかけがえのない場所になっていた。