第51章 第57回壁外調査
「そう…いう…事、だったのですね…」
「5年前のクレアはまだ調査兵団には所属していなかったからね。作戦を話す事はできなかったんだけど、ソニーとビーンが殺された時にエルヴィンが各兵士にしたあの質問。あれ、答えられたのクレアだけだったらしいよ。それに解答の内容も的を得ていてエルヴィン自身もその洞察力には驚いたって。だから今回の作戦の参加も“条件付き”だけど許可がおりたのさ!」
「……………」
ハンジの話を聞いて改めて周りを見れば、確かに自分よりだいぶ年上の兵士ばかりだ。
5年前のシガンシナ区の襲撃で線引きをしたエルヴィンの判断。
被害はまだ報告されていないが、エレンと同じく知性を持った巨人だと知らずに向かっていった兵士達は、恐らく全員死んでしまっているだろう。
あらゆる展開を想定した結果、仲間の命が危うくなっても、選ばなくてはならない。
それは100人の仲間の命か
壁の中の人類の命か
エルヴィンは100人の仲間の命を切り捨てる事を選んだ。
ー大きな事を成し遂げようとするには捨てなければならないモノも沢山あるんだー
クレアは昨年の秋に、エルヴィンが自分に話してくれた事を思い出す。
何かを変える事ができる人間は、大事なものを捨てる事ができる人。
あの時のエルヴィンの話の通り、何も捨てる事ができない人には何も変える事はできないだろう。
非常な決断をしたエルヴィンだが、クレアにはその意味が分からないわけではなかった。
そして、今聞いたハンジの話。
もし全てがその仮説通りなら、この目の前で生け捕りされた巨人は、壁を壊した2体の巨人の仲間であり、エレンの存在に何か理由があるため、抹殺、もしくは連れ去ろうとしたのだ。
それはいったい何のために……
しかしそれは“中身”が出てこないと聞く事さえできない。
「…しっかし、肝心の中身さんはまだ出せないのか?何やってるんだよリヴァイとミケは…」