第51章 第57回壁外調査
ードォォォン!!ー
「ふん!!…これでどう?もう痒いとこあっても掻けないよ?身じろぎ1つできないよ!多分一生ね!傷を塞げば塞ぐほど関節はより強固に固まっていく仕組みだ!」
更にもう1発お見舞いすると、ハンジは勝ち誇ったように言い放つ。
「………」
捕えた巨人は瞬時に判断したのか、急所であるうなじの部分を両手で覆っている。
こんな知恵が働くあたり、この目の前の巨人はエレンと同じ“巨人化できる人間”なのだろう。
「ハンジさん…あの……。」
「クレア!やったよ!巨人化できる人間を生け捕りにできた!!中身を引きずりだせば、壁を破壊したのが誰だったか分かる!」
「や、やはりこれは巨人化した人間なのですね?!」
クレアの予想はビンゴであった。
「…うん。恐らく、壁を壊そうとしている人間が兵団の中にいる。」
「え?!」
「エレンの存在は巨人が人為的に操作されてる可能性が高い。だから壁を壊そうとした巨人は人間であり…彼らは壁の内側にいると想定したんだ。でも不思議なのは、先日のトロスト区の襲撃では、破壊しようものならできたはずの内門を破壊しなかった事。やろうと思えばできた筈なんだ…」
「た、確かに……」
言われてみればその通りだ。
超大型巨人や鎧の巨人の目的が壁の破壊、壁内の人間の滅亡であるのならばあの時にできたはず。
調査兵団が壁外調査で出払っている隙をつけば一気に内門まで破壊できたはずなのだ。
「でも、中止しなくてはならなくなったんだ。もし彼らが壁の破壊よりも重視する何かがあの時起こったのだとしたら、それはエレンが巨人になって暴れ回った事以外には考えにくい…あの時、あの場所にいた誰かが壁外からやってきた諜報員の可能性が高いという結論に至ったんだ…」
「壁外からやってきた諜報員…」
「まだ彼らが壁を壊しに来た理由までは分からないけどね。諜報員は5年前、壁を破壊すると同時に壁内に侵入あるいは発生したと想定されるから、エルヴィンは容疑者をそこで線引きしたんだ。だから今回裏の…というか真の作戦を知らされていた兵士は5年前から生き残ってる者に限られたってわけ。」