第51章 第57回壁外調査
緑の信煙弾に従い、馬を走らせて1時間ほどがたった。
今回ハンジ班は陣形の内部、荷馬車の護衛を担当している。いつもは索敵の取りこぼしと遭遇しやすい位置に配置されるのだが、今回は違うようだ。
理由は聞かされていない。
聞かされていないのなら知る必要のない事なのだ。
クレアは黙って馬を走らせた。
“表向きの作戦”では南側にある旧市街地の視察だと聞かされていたが、信煙弾はさっきからずっと東のままだ。
「………」
クレアは壁外調査前に確認した地図の記憶を呼び起こすと、とある名所を思い出した。
それは巨大樹の森だ。
このままでは森にぶつかってしまうが、どうするのか。
進路変更の信煙弾が上がるのかと空を見上げるが、そうこうしている内に森が見えてきてしまった。
どうするのだろうか…
「クレア、このまま中列の私達は荷馬車と一緒に森に入るよ!」
「は、はい!!」
ここが「裏の作戦」の目的地なのだろうか。
クレアは素直に返事をすると、そのまま真っ直ぐと森へと入っていった。
80mを超える巨木群。
かつては観光名所として人の手による整備がなされていたが、現在は荒れ果て、日中だというのに日の光もろくに入ってこない。
立体機動装置の機能をいかすには絶好の環境だが、森に入ったのは中列の荷馬車護衛班のみ。
索敵は機能しなくなったため、いくら立体機動装置を使うのに適した地形だとしても、不意をつかれたらたまったものではない。
クレアは右に左に神経を尖らせながら走る。
何が起こるかまったく分からないこの状況に、らしくもなく息が上がってしまったが、必死に深呼吸をし息を整えた。
そして、ある場所まで辿り着くと、そこには先に到着していた荷馬車護衛班にエルヴィン達が何やら慌ただしく作業をしている。
いったい何をしているのだろうか。