第51章 第57回壁外調査
「ハンジさんも早く!ランティスが待ってますよ!!」
「ちぇ〜っ…クレアのケチ〜!」
ハンジはブーブー言いながらもモブリットと愛馬の元へと向かって行った。
調査兵団内での恋愛は自由だ。大きく風紀を乱さない限りそれはエルヴィン含む幹部にも共通している。
そのため別にリヴァイとの関係を厳重に極秘にする必要は無いのだが、リヴァイは人類最強の兵士長。
男女問わず皆その背中を追い、尊敬し、憧れる存在だ。
そんなリヴァイの恋人が末端兵士の自分だという事が広まってしまったら皆はどう思うだろうか。
きっと良く思わない者もいるだろう。
実際にそれでトラブルになった過去もあるのだ。
一部の人間は2人の仲を知っている。
そして、2人の仲を怪しんでる者もいるだろう。
だが、過去の苦い事件もあり、クレアは表立って公表する事は避けていた。
「104期のみんなも、早く準備しないと遅れちゃうよ!忘れ物がないかもう一度確認もしてね!」
「「「は、はい!!!」」」
気不味くなった空気はハンジの登場により見事に解消したが、新兵達は“クレアに手を出すと巨人より厄介な…”の続きが気になって仕方がなかった。
だが、クレアの言う通り間もなく出発だ。
クレアの言葉に声を揃えて返事をすると、新兵達は其々に準備を始めるため散って行った。
「はぁ…もう、ハンジさんったら…それにジャンもライナーも…みんなも…うぅ…」
クレアは今まで生きてきて何十回、何百回と自身の容姿を恨んだが、今日も改めてこの子供の様な容姿を恨みため息をついた。
「ブルン……」
クレアがガックシとうなだれると、デイジーが前掻きをしながら鼻を鳴らす。
不貞腐れているクレアを励ますように、デイジーは鼻を鳴らすと、そっと頬にキスをした。
「ご、ごめんねデイジー…準備、急ぐね!」
飼い葉のいい香りがする励ましのキスで我に返ると、クレアも急いで準備にとりかかった。