第51章 第57回壁外調査
「ジャン…クレアさんから離れて…」
サシャの冗談を本気でとらえたのか、はたまた真面目な突っ込みなのかは不明だが、訓練兵団を主席で卒業したミカサがブレードを抜こうとしている。
ジャンは熱くなった全身が、今度はサーッと凍りついていく感覚が走った。
「ま、待てよミカサ!!てかサシャ、変なこと言うな!俺はナニもしてねぇよ!!」
握っていた手を離して両手をブンブン振り無実を訴える。訴えれば訴える程に怪しさが増すが、主張をしてミカサがブレードを引っ込めてくれなければ壁外調査に出ることもなく自分がうなじを削がれてしまい、人生そのものがおジャンになってしまう。
「ミカサ、私何もされてないから大丈夫よ…だからブレードから手を離して…?」
「……クレアさんがそう言うなら……」
みかねたクレアも仲裁に入ると、やっとミカサはブレードから手を離した。
「はぁ……お前らふざけんなよ…」
「セクハラにしか見えませんでしたよ〜!」
慌てるジャンをよそに皆は楽しそうだ。
ケラケラと声を出して笑っている。
「そう言えばクレアさん、いつもと髪型違いますね!」
「どうやってやったんですか?なんだかこれから夜会にでも出られそうなくらいキレイです!」
そして女子達はクレアの髪型がいつもと違う事に直ぐに気づいて盛り上がったが、ライナーが鋭い質問を投げかける。
「クレアさん…って、俺たちの2期先輩ですよね?失礼ですが…年齢は、17歳ですか?」
「え?!私?」
ライナーの問にそこにいたミカサ以外の新兵全員が頷いた。
やはり、皆も普段の見た目と髪を結い上げた今の大人っぽい姿にギャップがあり、疑問に思ったのだろう。
「……私、15歳の時に訓練兵団に入ったから、今年で…というか…もうすぐ20歳だよ?」
その回答を聞き一瞬沈黙が走る厩舎内。
「はーーーーーーー!!」
「え……!!?」
そして皆声を揃えて叫ぶ。
「たーーーーーー!!」
「う……」
「ちーーーーーーーー?!!」
「…………」
もうこんな反応も慣れたものだが、ショックはショックだ。
クレアは苦笑いでコクリと、頷く事しかできなかった。