第51章 第57回壁外調査
「(あぁ…!クソッ……!!違うだろ!!)」
壁外調査当日の朝だというのに、ジャンは予想もしていなかったクレアの姿に、頭の中は悶々としだしてしまった。
「だ、大丈夫……?先生呼んでこようか??」
本気で体調を心配したクレアは、ジャンに背中を向け、医務室まで行こうとしたのだが…
「クレアさん待って…!!俺、大丈夫ですから!」
「……あっ…!!」
慌てて止めようとしたジャンは勢いでクレアの手首を掴んでしまった。
「………っ!!」
衝動的に掴んでしまった手首。
その手首の細さに再びジャンの心臓は加速し、走ったわけでもないのに勝手に息が上がってしまう。
コレではただの変態だ。
だが、女の腕とはこんなに細いのか…
今迄恋人がいた事はおろか、女と手を繋いだ事もない。
本当にこんな細い腕で、小さな手で、立体機動装置を操作しブレードをふるっていたのか。
ジャンには信じられなかった。
「あ、あの……」
突如手首を掴まれてしまったクレアはどうしようか戸惑ってしまった。
なんだか様子がおかしいが、医師を呼んでほしい訳では無さそうだ。
「………」 「………」
お互いに黙ったまま気不味い空気が流れて行く。
だが、こんな気不味い雰囲気を吹き飛ばしてくれる救世主が現れた。
「あれ?ジャンですか?早起きですね〜。」
「!!」
声のした方向を向くと、そこにいたのは104期の新兵のメンバーだった。
「ジャン、いねぇと思ったら先に来てたのかよ。…って…何やってるんだ?ん…?クレアさん?」
ジャンと同室のコニーが、ため息をつきながら声を掛けたが、なんだか様子のおかしいジャンを見ると、その手はクレアの手首を掴んでいる。
「オイ!お前…!!」
「ジャンがクレアさんにセクハラしてまーす!」
「…………」
サシャが敬語で突っ込みを入れると、隣にいたミカサが黙ったままブレードを抜こうとした。