第50章 作戦
すると、少し考え込む様に腕を組みだしたハンジは、クレアの言おうとしている事を分析しながら答える。
「つまり、クレアが言いたいのって…巨人化する事に関しては“練度”があるって言う事かい?」
「練度…ですか?」
練度とは書いて字の如く、“鍛錬を積み重ねて得られる熟練度”。
「つまり、ついこの間巨人化できる事に気づいたばかりのエレンはまだその力の限りを発揮できていない未熟者だが、壁を破壊した巨人は、巨人化する事に関しての鍛錬を積んでいて、その熟練度を上げてきたいわば達人。それ故に、自らの計ったタイミングで巨人化し、破壊可能な壁門目がけて正確な攻撃ができた…と。こういう事?」
「そ、そこまで明確には考えていませんでしたが…ハンジさんの仰る通りです……」
「そうか…確かに、壁を破壊した巨人の仕組みがエレンと同じメカニズムだとすると、クレアの疑問ももっともだ。となると、訓練次第でエレンは巨人の力を使いこなせる可能性もあるし……その逆をかんがえると壁を破壊した巨人はもしかして……」
そこでハンジは口をつぐんでしまった。
「ハンジさん…??」
「あっ、いや、何でもない。クレア…なかなか鋭い所に気づいたね。明日の幹部会議の前にエルヴィンに報告しておくよ。」
「そ、そんな…今のは私の勝手な疑問を口にしたまでで…」
「いいや、クレア。これは必ずエルヴィンに伝えるべきだ。私から話をしてしまうけど…いい?」
ハンジの目は真剣だ。
上官のハンジにそこまで言われてしまえば反対する理由などない。
「は、はい…構いません!」
クレアは立ち上がり敬礼をすると、休憩の紅茶を淹れに行った。
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そして2週間後。
壁外調査まであと1週間をきった。
長距離索敵陣形の訓練にも熱が入り、兵団内が段々と緊張感に包まれていく。
104期の新兵達も生き残りたい一心で訓練に励んでいた。