第50章 作戦
「エレンの実験結果が暴れてばかりじゃ外野は納得しないだろうし、だからといって検証しなきゃ何も得られない。その上、エレンの暴走でリヴァイ班の誰かが死んでも困るし、だからと言ってリヴァイがエレンを殺してしまったら得られる情報はゼロだ。この間リヴァイが言ってた瀕死で済む方法はかなりの技量が求められるし、だからといって何度も井戸の中で巨人化実験するわけにもいかない…」
「ハンジさん…」
「あぁ!!自分でも何言ってるか分からなくなってきたぁ!!」
再び天井を仰ぎながら頭を掻きむしりだした。
そんな様子のハンジに紅茶でも淹れてやろうと思ったのだが、1つクレアの中でひっかかるモノがあった。
「あの…ハンジさん…エレンって巨人化する事も、巨人化した後の事も、コントロールできるかどうかは不明なんですよね?」
「え?ま、まぁ…今のところ報告書ではそうなっているけど…どうしたの?」
そう、エレンは巨人化できる人間で間違いはない。
しかし…確実に巨人になる、巨人化した自身をコントロールする事に関しては不確定要素だらけだ。
実際に砲弾を防ぐためや、壁の穴を防いた時は自らの意思で巨人になれたが、穴を塞ぐ前は一時的に自我を失いミカサを攻撃したのだ。
「えと…ちょっと疑問に思ったのですが、シガンシナ区やトロスト区を襲撃した超大型巨人や鎧の巨人って、“確実”に、そして“狙って”、壁を破壊しましたよね?壁を破壊した巨人もエレンと同じ様な巨人化できる人間だと考える場合、その彼らとエレンの違いはいったい何なのでしょうか?」
「…え?!」 「……!」
クレアの発言にハンジは頭を掻きむしる手を、モブリットはペンを持っていた手をピタリと止める。
「あれ…?えと…私何か変な事言いましたか?」
動きを止めた2人にクレアはビクリと肩を震わせた。何かおかしな事を言っただろうか。