第50章 作戦
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なんとか気持を切り替え、ハンジの執務室でいつもの精製作業をするクレア。
だが、忙しく精製作業をしているのはクレア1人。
ハンジは、エレンの事で頭がいっぱいで今後の実験についてあーでもないこーでもないと言いながら紙をグシャグシャと丸めて床に投げている。
そしてモブリットはモブリットで、ずっとこんな調子で書類仕事に一切手を出さなくなったハンジの代わりに黙々と書類をこなしている。
すっかり事務仕事を放棄したハンジに、時折書類を読み上げてやっている場面も伺える。
そうなると自然と精製作業はクレアしかやる者がいない。
今やクレアも立派なハンジ班の班員。
精製作業も難なくこなせる様になった。
だがしかし、1人でやるとなると少々忙しくなってしまう。
火加減に注意しながらアレコレ作業をしていたらハンジが頭を掻きむしりながら喚きだした。
「あ〜〜!!もう分からん!!どうしたらエレンの巨人化をうまくコントロールしながら実験ができるんだ!」
「??」
いつものハンジなら考えるより先に即行動に移すはずだが…よくよく考えれば先日のエレンのスプーン事件の後からハンジはずっとこんな感じに煮詰まっている。
「なんだかハンジさんらしくないですね?」
「え?!」
「す、すみません…いつものハンジさんなら色々考えるよりすぐに行動に移しているので…何かエレンの事で気がかりでもおありですか?」
すると、ハンジはため息をついて、思い切り背もたれに体重をかけると、天井を仰ぎながら答えた。
「いやぁ…クレアの言う通りなんだけど…私だって思いとどまる事もあるよ。せっかくの被験体が殺されてしまったから巨人の謎を解明するにはもうエレンしかいない。そのエレンだって不確定な要素だらけでリヴァイ班は常に緊張状態だ…」
そして、また書きかけの紙を丸めて放り投げる。