第50章 作戦
ーカシャンッ!ー
「あっつ…!」
スプーンを落とすと熱いスープが飛び散って手にかかってしまった。
クレアは条件反射で大きく手を振ってしまう。
「ちょっと、クレア大丈夫?!」
「だ、大丈夫です。でもペトラさん…変な事言わないで下さい!!」
「え?変な事?やっぱり兵長の事でしょ?」
少しニヤニヤしながら楽しそうにペトラは突っ込む。
「べ、べ、別に…不謹慎な事をしていたわけではありませんからね!!」
「アハハ……」
しどろもどろになりながら“不謹慎な事などしていない”と強調している姿で、もう何をしていたのか面白いように分かってしまいペトラは思わず笑ってしまう。
「な、何がおかしいんですか?」
「ごめんごめん!何でもない。あーあ、でもいいなぁ、クレアにはあんなに溺愛してくれる彼氏がいて!」
「ちょっ、ペトラさん、声大きいです…それに、溺愛とか彼氏とかって……」
確かにリヴァイはクレアの彼氏という立ち位置にいるのだが…年上の、しかも兵団内の幹部として皆の尊敬を受けているリヴァイを“彼氏”という若者言葉で表現するのは恐れ多い気がしたし、溺愛されてるなどもってのほかだ。
「違うの?どう見たって兵長がクレアに溺愛してる様にしか見えないよ?」
「そ、そんな…そ、そういうペトラさんはどうなんですか?」
「え??」
「今まで聞いた事なかったですけど…彼氏とかっていないんですか?」
リヴァイとの事を話したくないわけではないが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
クレアは苦し紛れに話題を変えた。
「私?私はお生憎様、彼氏はずっと募集中なんだけど、誰も立候補してくれなくてさぁ。」
「そうなんですか…オルオさんは候補に入ってないんですか?」
オルオとペトラは同期と聞いていたし、なんだかんだ言ってもあそこまで辛辣にオルオに突っ込めるのはペトラしかいない。
「ぶはぁっ!!!やめてよあんなヤツ!!」
しかし、ペトラからしてみればありえない候補だったらしい。盛大に水を吹かれてしまった。