第50章 作戦
自身から視線を外し、小さな手をグッと握りしめて立ち尽くすクレア。
リヴァイにはその態度で図星であった事が手に取るように分かってしまう。
「はぁ……」
深いため息をついてクレアに詰め寄るリヴァイ。
「あ、あの…兵長……」
ため息をつき、機嫌は良くはなさそうだが、だからと言って怒っている様にも見えない。
だが戸惑っている間にも、あれよあれよという間にクレアはソファまで追いやられると、尻餅をつきそのまま組み敷かれてしまった。
「新兵には構うな…それに、馬当番は調査兵団の洗礼の1つだ。勝手に甘やかすんじゃねぇよ…」
「兵長…す、すみませんでした……」
甘やかすつもりは無かったが、やはり独断でやっていい事ではなかった。
改めて反省するとクレアは素直に謝罪の言葉を口にしたが、そうすると頭に浮かんだ疑問が1つ。
「あの、兵長…それでしたらどうして私には教えてくださったんですか?確かにあの薬はとても良く効きました。他の同期達は次々に酷い筋肉痛になっていくのに、私だけ翌日にはほぼ回復してましたので…周りからは不思議がられました…」
「………」
ーどうして私だけに…ー
…そんなの決まっている。
あの時のリヴァイはクレアの事が気になって気になって仕方がなかった。
もっともらしい理由をつけてクレアに触れようとしたのだが、そんな事は口が裂けても言えない。
リヴァイは必死に当時の会話を思い出すとひり出す様に答える。
「それは…ただの礼だと…あの時にも言ったはずだ。」
「…も、勿論覚えてますけど…お礼にお礼をするなんて、ちょっと変だなと思っただけです。」
「…………」
リヴァイは思う。
あの時はわからなくとも、今は恋人同士なのだ。
それくらいは察しろよと心の中で再び盛大なため息をついてしまった。
2人の仲がどんなに深まっても、無自覚で鈍感な性格は何年たっても健在の様だ。