第8章 迷える想い
「もしかして…クレアとヤッちゃった?!」
ハンジはグイグイと顔を寄せてきてニヤニヤしている。
「ねぇ?!ねぇってばリヴァイ!どうなの?まさか図星?」
移り香とは、まったくもってリヴァイの想定外であった。
「うるせーな、顔近すぎだクソメガネ。お前が期待してるようなことは何もねぇよ。部屋まで連れて行こうとしたが、どの部屋かわからなくて仕方なく俺の部屋で寝かせただけだ。」
「へ?そうなの?なーんだ。」
ハンジはつまらなそうに答えると書類にサインを書いてリヴァイに渡した。
「なんだよ……前にお前が勘違い起こした時は俺の胸ぐら掴みやがったくせに」
「アハハ、そんな時もあったねー。あれはリヴァイが無理矢理襲ってるのかと思っちゃったんだよ。でもまぁお互い合意の上なら口はださないし、むしろ応援するからさ。はぁー、昨日のやりっぱなしの道具、片付けなきゃなー」
ハンジはニヤニヤとしたまま自分の執務室の方までいってしまった。
「チッ…クソメガネが……」
リヴァイはなんとも後味の悪い気分になったが、目的の書類をもって仕方なくエルヴィンの団長室へむかった。
──エルヴィン団長室──
「頼まれてた書類だ。待たせたな…」
「あぁ、リヴァイ悪かったな。助かったよ。ハンジは相変わらずか?」
「はっ、そうだな。昨日も恒例の燃料切れ起こしてモブリットが部屋まで運んでたぞ。そろそろあいつハゲるんじゃねぇか…」
「ハハハ、モブリットも若いのに気の毒だな。でも彼もクレア同様ハンジを尊敬して信頼しきっている。ハゲたとしても決して見捨てないだろう。」
尊敬に信頼は結構なことだ。だが、モブリットといい、クレアといい、あのクソメガネに入れ込むやつはどうしてあんなに度を越すんだ。
リヴァイは心の中でため息をついた。
「たいした忠誠心だな。じゃあな…」
「あ、リヴァイ?」
出ていこうとしたリヴァイだったが、エルヴィンは思わず引き止めた。
「なんだ?」
「…………」
何かいつもと少し違うような違和感を覚えたが、エルヴィン自身よくわからなかった。
「い、いや、なんでもない。悪かったな。」
「なんだよ、気持ちの悪いヤツだな。」
リヴァイは団長室を後にした。