第49章 104期入団
差し出された包を開けると、中から出てきたのは1本のティースプーンだった。
「これは…」
「エレンが出した巨人の右手がこれをつまんでた。こんな風にね。」
ハンジは人差し指と親指でティースプーンをつまんで見せた。
「…え?」
「偶然挟まっていたとはちょっと考えにくいね。しかもなぜか熱や圧力による変形は見られない…何か思い当たることはない?」
「あ…!確かそれを拾おうとして…巨人化はその後でした。」
その言葉に目の色を変えるハンジ。
頭の中で考えていた仮説が彩りを増してくる感覚を覚えた。
「なるほど…今回巨人化できなかった理由はそこにあるのかも…」
「……?」
「巨人を殺す、砲弾を防ぐ、岩を持ち上げる、いずれの状況も巨人化する前に明確な目的があった。恐らく自傷行為だけが引き金になってるわけではなくて、何かしらの目的が無いとダメなのかもね…」
「そんな…確かに状況は似ていますが…スプーンを拾うために巨人になるなんて…何なんだこれは…」
エレンは自身の両手を見つめる。
先程巨人化しようとさんざん噛みちぎった傷が見事に治っている。これはまさしく巨人化の再生能力。
ハンジの言う通り、自分はスプーンを拾うために巨人になった様だ。
「…………」
エレンの様子からして、今自分が話した仮説はそこそこ的を得ているのだろう。
ハンジには色々と疑問に思う点があったが、疑問が多すぎて頭がついていかない。
「私が悪かったよ…人に戻る方法も考えたい。でも次の壁外調査までは陣形の全体訓練で時間が無いし…」
「作戦が破綻しかねない様な無茶はしないって事か?」
「うん…今回の所は…」
「クソメガネにしてはいい判断だな。了解だ。」
特に進んでいい判断をしようと思ったわけでは無いが、疑問に思う点が多すぎる。
ハンジには今一度整理する時間が必要だった。