第49章 104期入団
エレンのいる井戸から一定の距離を取ると、ハンジは信煙弾を打った。
皆すぐに動ける様、騎乗しエレンが巨人化するのを待ったが、いつまでたってもその気配がない。
ただただ広大な草原にのどかな風が吹くだけだ。
「……?ねぇリヴァイ、合図が伝わらなかったのかな?」
「…いいや、そんな確実性の高い代物でもねぇだろ…」
リヴァイとハンジは馬を走らせ井戸に向かう。
「あっ!兵長!ハンジさん!」
クレアも2人の後ろを追いかけた。
「おいエレン!!一旦中止だ!!」
「エレン、何かあったの?!」
3人は薄暗い井戸の底でポツリと立っているエレンを覗き込んだ。
「「「!!!」」」
「ハンジさん……巨人になれません……」
3人の目に飛び込んできたのは両手を血だらけにして呆然とするエレンの姿だった。
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エレンが巨人化できないとなると実験は中断だ。
リヴァイ班にハンジ班はひとまず休憩を取ることにした。
「エレン…手を診せて??」
「あっ…クレアさん…」
「こんなに血が出るまで噛んだの?…応急処置するからじっとしていて。」
クレアはデイジーに積んだ荷物から救急セットを持ってくると、エレンの負傷した両手を手当し始めた。
確か審議所でリヴァイが蹴り飛ばして折れた歯は、直ぐに生えてきた。
それと同じ理論でいけば、この傷もすぐに治癒しそうなのだが、目の前にある手は痛々しくも赤く腫れて血を流している。
この違いは何なのか。
クレアは疑問を感じながらもエレンの手を消毒し、包帯を巻いていった。
「自分で噛んだ手も傷が塞がったりしてないのか?」
「はい…」
リヴァイもクレアと同じ事に疑問を感じた様だ。
「…お前が巨人になれないとなると、ウォール・マリアを塞ぐっていう大義もクソもなくなる。命令だ、なんとかしろ!」
「はい……」
ピリピリとしたリヴァイはその場から離れていき、機嫌を損ねたリヴァイをペトラがなだめにいった。