第49章 104期入団
「………」
エルヴィンの顔は真剣だ。
自分の目には何が見えているのか。
そして、被験体殺害の裏に隠された真実が自分には見えるのか。
そう聞いているのだろう。
クレアは考える。
そもそもどれだけ巨人が憎いからといって、それだけの理由で兵士が被験体を殺すだろうか。
巨人に対しては常に情報不足、謎だらけなのだ。
むしろ巨人を憎くて憎くて怒りの感情を持っている人間こそ、この被験体捕獲を期にうなじの攻撃以外の急所を見つけ、1日も早く巨人絶滅を願うものではないのか。
となるとこの殺害には巨人に対する憎しみ以外の何かが絡んでるとしか思えない。
この犯行に及んだ人間には、被験体を“殺さなくてはならない”理由があったのだろう。
クレアはそう考えた。
「団長…私の様な下級兵士が意見を述べるなど恐れ多いのですが…私には巨人に対して怒りの感情を持っている兵士の犯行では無いと思います。“殺さなくてはならない理由”があった様に思えるのですが…」
「そうか…ありがとう。」
エルヴィンはクレアの返答に肯定も否定もせず、肩をポンと叩くと部下を連れて去ってしまった。
「団長……」
結局質問の真意は分からなかったが、今はこの目の前で乱心している我が上官を何とかしなければ。
クレアは泣きじゃくるハンジの側に駆け寄った。
「ハンジさん、お気持ちは分かりますが少し落ち着きましょう。これから憲兵団の方もいらっしゃいますし……」
「うぅ……ソニー…ビーン……」
ショックが大きすぎて魂が抜けてしまった様なハンジをモブリットとクレアで担ぎながら、ひとまず兵舎内の執務室まで連れて行った。
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「ハンジさん…紅茶です。少し休憩しましょう。」
「う…ありがとう。」
執務室まで辿り着くと、クレアはハンジをソファに座らせて紅茶を出した。
ここ数日ほぼ寝ずに実験や考察をしていたのだ。
今後の事を考えなければならないが、まずはハンジを少し休ませなければ。
モブリットもクレアも同じ事を考えていた。