第8章 迷える想い
「分隊長と一緒に…眠ってしまったのでしょうか………?」
2人はまるで、仲の良い姉妹のように寄り添って眠っていた。
その気持ち良さそうに眠る寝顔は、とても過酷な運命に身を置く調査兵には見えないほどだった。
「おい、モブリット。このクソメガネはともかく、コイツも起きねぇヤツなのか?」
リヴァイはハンジがこうなると、朝まで起きないことを知っていた。
「えーと、クレアがこんなふうになったのは初めてで………」
「おい……おい!起きろ、奇行種!」
「……………んー…ハンジさーん……」
「チッ…気持ちの悪い寝言を言うんじゃねぇよ…」
リヴァイが手加減なく身体を揺すったが、クレアは起きる様子はみられなかった。
「…………おい、モブリット。何日目だ………」
「はい?なんのことでしょうか?」
「このクソメガネが最後に風呂に入ってから何日たっていやがる!」
モブリットはできれば答えたくはなかったが、相手はリヴァイだ。
一度ゴクリと唾を飲み込むと、脂汗を一筋流しながら答えた。
「今週はずっと徹夜が続いていたので…4.5日は入ってないと…思われます……」
リヴァイの眉間に皺がよったのをモブリットは見逃さなかった。
「了解した…クソメガネはお前が部屋まで連れて行け。」
「はい…承知致しました…」
リヴァイはクレアを横抱きに抱えると、ハンジの執務室を後にした。
クレアはどんなに多忙でも必ず風呂に入る。今まで何度か夜に大浴場の前ですれ違ったことがあったし、今日はもう風呂を済ませているようだ。
そういったところはハンジに似ていなくて良かったと考えながら長い廊下を歩き、女子棟のあたりまでたどりつくと、リヴァイはある大きな失敗をしでかしたことに気がついた。
「………こいつの部屋はどこだ……」
クレアを抱えながら呆然と立ち尽くしてしまった。
時刻は12時を過ぎてしまっている。
さすがに一部屋一部屋ノックして確認するわけにもいかない。
クレアは首から部屋のカギをかけていたが、残念なことに部屋番号がわかるような目印はついていなかった。
さてどうするか……