第48章 嫌疑と再会
「私の事…覚えているの?」
先程は遠目ではっきりとは分からなかったが、ハンジの影から出てきたクレアは記憶のままのクレアだった。
何もかも、あの時と変わらない姿のクレア。
5年以上もの時の流れで自分は背も伸び、それなりに顔も変わった事だろう。
しかし目の前にいるクレアだけは、まるで時が止まってしまったかのように姿形全てが当時の記憶のままだった。
「はい…シガンシナ区が襲撃されてからは、自分の事で精一杯でしたが、審議所内で姿を見た時は驚きました…」
「あっ……」
そう言いながらすっと立ち上がったエレン。
背はエレンの方が高く、視線を合わせるには上を向かなくてはならなかった。
「わ、私も同じよ…実はイェーガー先生と父が、昔交流があったという事で私も審議にかけられていたの。その時に、エレンとの事を思い出したのよ…それにしてもエレン…凄く背が伸びたのね…男の子なら当たり前かもしれないけど…」
「クレアさんも審議に…ですか…?…あの…オレと関わっていたがために…すみませんでした…」
ミカサとアルミン以外にも、自分のよく知る人物が審議にかけられていたことに戸惑いを隠せなかったエレン。
「そ、そんな事ないわ…エレンだって好きでこんな事になった訳ではないんだし…謝らないで?」
だが、クレアは優しい口調で謝らないでと、小さく微笑みながらエレンの顔を覗きこんだ。時が止まってしまったかの様に見えたクレアの姿だったが、こんな微笑みは初めて見る顔だ。
「…クレアさん……」
「そ、それにしても…本当に背伸びたのね?あんなに小さかったのに…」
少し顔を赤くしながら懸命に自分を見上げるクレア。そんな表情を見て心拍数が上がるのは何故だろうか。
「せ、背が伸びたと言っても…普通です…えと、クレアさんは…」
クレアさんは変わらないですね
そんな事を言ったら失礼だろうか。
言いかけて思わずその言葉を引っ込めると、まるでエレンの心を読んだかのような横槍が入ってきた。