第48章 嫌疑と再会
ただ、黙って、ひたすらにエレンを蹴り飛ばす。
「ゔぅ……」
「グッ……」
エレンはリヴァイに蹴られるたびに口から、鼻から、血飛沫を上げうめき声を漏らす。
しかし、エレンは歯を食いしばり、目には熱を宿したまま耐えていた。
だが、一切無抵抗のエレンに対して、眉一つ動かさず冷めた表情で一方的に暴力を奮うリヴァイに、さすがのナイルも声をかけた。
「…待て…リヴァイ……」
「何だ……」
エレンの顔面に足の裏を押し付けリヴァイは無表情のままナイルを見た。
「…危険だ。恨みを買ってこいつが巨人化したらどうする。」
「…あ?何を言ってやがる。お前らはこいつを解剖するんだろう?」
「………」 「………」
すると、冷や汗をかいた顔で黙りこんだナイルに、銃を構えた部下。
まともに巨人と対峙した事もなければ、巨人を討伐などした事のない奴らだ。リヴァイには彼らのら顔が“アホヅラ”にしか見えなかった事だろう。
「はっ……」
思わず鼻から笑いがこぼれてしまった。
「こいつは巨人化した時、命尽きるまでに20体の巨人を殺したらしい。敵だとすれば知恵がある分厄介かもしれん。だとしても俺の敵ではないが…お前らはどうする?」
知恵のある巨人。
彼らには壁外で人間を見つけては食うことしかしない巨人1体ですら倒すことも叶わないだろう。
リヴァイの問にすぐに答えられる者は1人として出てこなかった。
「こいつをいじめた奴らもよく考えた方がいい。本当にこいつを殺せるのかをな…」
なおも沈黙が続く審議所内。
まさかのタイミングで、流れは完全に調査兵団が握った様だ。
「総統…ご提案があります…」
すると、エルヴィンがここぞとばかりに提案を申し出る。
「エレンの“巨人の力”は不確定な要素を多分に含んでおり、その危険は常に潜んでいます。そこで、エレンが我々の管理下に置かれた暁には、その対策としてリヴァイ兵士長に行動を共にしてもらいます。彼ほど腕が立つ者ならいざという時にも対応できます。」
「ほう……」
ザックレーはエルヴィンの提案に関心を示し始めた。