第48章 嫌疑と再会
「はい、調査兵団13代団長エルヴィン・スミスより提案させて頂きます。」
「…………」
自分で自分の存在価値を説けるならそうしたいが、今はその自身の生死を今一度改めさせられているのだ。今この時点で好き勝手な発言はマイナスにしか動かないだろう。
となると、エルヴィンの提案が大変重要だ。
エレンはすがるような視線でエルヴィンを見つめる。
「我々調査兵団はエレンを正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用しウォール・マリアを奪還します。以上です。」
「…ん?もういいのか?」
「はい…彼の力を借りればウォール・マリアは奪還できます。何を優先すべきかは明確だと思われます。」
「…そうか。」
「………」
ザックレー同様エレンも、エルヴィンのあまりにも短的な提案に少し拍子抜けをしてしまった様だ。
しかし、短いながらにもその内容が全てだった。
「ちなみに今後の壁外調査はどこから出発するつもりだ?ピクシス、トロスト区の壁は完全に封鎖してしまったのだろ?」
「あぁ…もう二度と開閉できんじゃろう。」
「今後の壁外調査では、東のカラネス区からの出発を希望します。シガンシナ区までのルートはまた、1から模索しなければなりません…」
すると、壁は扉の部分を含めて全て埋め固めるべきだという商会側の人間と、“神から授かりしローゼの壁に人間風情が手を加えるな”というウォール教の意見がぶつかり合い審議所内で再び言い争いになってしまった。
「はぁ…よく喋る豚野郎共だ…扉を埋め固めている間に巨人が待ってくれるって保証がどこにあるって言うんだ…」
「兵長……」
呆れたように呟くリヴァイ。
その声が彼らに聞こえていたかは不明だ。
2度目の壁の破壊で壁内は混乱状態。
しかし、この目の前の人間達は、多くの支持と権力を持っていながらも、心配しているのは自分の利益だけだ。
自分を含めた調査兵団が命を懸けると言っているのに耳をかそうともしない。
エレンはこの状況に歯痒さを感じ、沸々と焦れた感情が湧いてきてしまった。