第48章 嫌疑と再会
「察しが良くて助かるな…」
エレンが巨人化した事実を民衆に隠すことは不可能だった。そのため、エレンの存在をいずれかの形で公表しなければ、壁内は混乱に混乱を呼び、巨人とは別の驚異が発生しかねないという。
既に壁内ではエレンの事を
破滅に導く悪魔と呼び…
またある者は
希望へと導く救世主と…呼ばれているそうだ。
「オレが、悪魔…?救世主…?」
まったく相反する感情論だ。
「そのため、今回決めるのは君の動向をどちらの兵団に委ねるかだ。その兵団次第で君の処遇も決定する。憲兵団か…調査兵団か…」
「………」
「では、憲兵団より案を聞かせてくれ。」
すると憲兵団トップ、ナイル・ドーク師団長が、持っていた資料を出し提案をし始めた。
「我々は、エレンの人体を徹底的に調べ上げた後、速やかに処分すべきと考えております。彼の存在を肯定することの実害の大きさを考慮した結果、この結論に至りました。」
やはり、憲兵団の意見は一切曲がらず“エレンの処分”だ。
今回の襲撃を受けてもなお壁外への不干渉を貫く有力実権者、そしてエレンを英雄視し始めている一部の民衆。今の状態を放っておけばこの領土を巡り内乱が起こりかねない。
トロスト区への侵入を阻止した功績も事実だが、多くの損害を出したのもまた事実。
そのためナイルは、エレンにはできるだけの情報を残してもらった後に、人類の英霊となってもらうと主張した。
「そんな必要はない」
「……?!」
しかし、エレンを神の英知を侵した害虫だと罵る男は今すぐに殺すべきだと主張をする。
その男の名はニック。
壁を神授のものとして崇拝するウォール教という組織の司祭だ。
ウォール・マリア喪失後に、急激に教団の人気が高まり、この男の司祭としての立場も強くなった様だ。
「ニック司祭殿、静粛に願います。次は調査兵団の案を伺おう。」
「……チッ…」
しかし、ザックレーにより主張は中断させられてしまった。
次はいよいよ調査兵団の意見だ。
エレンは固唾を飲んでエルヴィンの語られる内容に耳を傾けた。