第48章 嫌疑と再会
背後から匂いを嗅がれたエレンは助けを求めるようにハンジを見た。
まぁ、正常なリアクションだ。
「彼も同じ分隊長のミケ・ザカリアス。そうやって初対面の人の匂いを嗅いでは…」
「フンッ……」
「鼻で笑う癖がある。」
「………」
こんな風にミケの癖を説明するのはいったい何度目だろうか。
例に漏れずエレンも言葉を失っていた。
「多分深い意味は無いと思うね。まぁこんなんでも分隊長を務める程の実力者ではあるんだ……あっ!!」
そこまで話すとハンジはある事に気づく。
「ごめん…意外と早く目的地に着いちゃった…けど…大丈夫!!」
「え??」
本当は、是非とも調査兵団に入って欲しい事、一緒にウォール・マリアを奪還したい事、巨人について一緒に解明していきたい事、野次の挑発には耳をかさなくていい事など、話したい事は山程あったが、もう無理そうだ。
だが、エレンは訓練兵団に入団した時から調査兵団を希望していて、その志も高いものだったとエルヴィンとリヴァイから聞いていた。
この土壇場で自分が教えてやれる事など何もないのかもしれない。
「むしろ、説明なんか無い方がいい。」
そう…説明などいらない。
「エレンが思っている事をそのまま言えばいいよ。勝手だけど私達は…君を盲信するしかないんだ……」
5年もの歳月を費やし、幾千もの犠牲を払って築き上げてきたマリア奪還ルート。
今回の超大型巨人の再来によって、これが一瞬にしてゼロになってしまったのだ。
しかしそこに現れたエレンという巨人化する少年。
彼が本当に我々の味方となり戦ってくれるのなら、マリア奪還の大きなカギとなる。
ー盲信するしかないー
本当にその通りだ。
ハンジは戸惑うエレンの顔を見ながら心の中で呟いた。
ーバタンー
すると、エレンは憲兵に連れられ、審議所の扉は重苦しい音を立てて閉まった。