第48章 嫌疑と再会
ハンジはゴクリと唾を飲み込みながら一歩、また一歩と足を踏み入れる。
そして奥まで入ると、独房の様な牢に更に鎖で繋がれている少年の姿。
両手首を鎖で繋がれていて身動きが取れない様だ。
ずっとこんな所でこんな扱いを受けていたのだろうか。
ハンジは再度深呼吸をすると、黒い鋼鉄の格子に近づき声をかけた。
「ごめんねエレン…待たせてしまって。」
「…………!」
「でもやっとここから出られそうなんだ。」
ここから出られると言ったにも関わらずエレンはポカンと口をあけたままだ。
「あ、あれ?嬉しくないの…?」
ハンジは思っていた反応と違い拍子抜けをしてしまう。
「い、いえ…そういう訳では……」
エレンはいきなり現れた兵士2人を見て戸惑っていた。1人は寡黙な長身兵士、そして今声をかけてきたのは正直性別が分からなかったが…おそらくは女だろう。
よくジャケットを見れば「ここから出られそうなんだ」と言った兵士は調査兵団だった。
エルヴィンの指示で来たのだろうか。
「まぁ、とにかく一緒に来てよ。」
「は、はい」
そう言うと、銃を抱えた憲兵が牢のカギを開けて、エレンの手首を拘束している鎖も解錠した。
「おい、手は後ろに回せ!」
しかし牢から出られても、拘束は継続の様だ。
短い鎖によって再びエレンは両手の自由を奪われた。
ーコツコツ…ー
ハンジはこれから執り行われる審議について、色々と話してやりたかったが、すぐ背後には御丁寧にも2人の憲兵が銃を構えている。
エレンに有益になる様な事を話してしまえば、調査兵団でエレンの身柄をを受け持つ事は叶わなくなるだろう。
「私は調査兵団で分隊長をやっているハンジ・ゾエ。そっちの彼は…」
自己紹介をするくらいしか話してやれる事がなく非常に歯痒い。
すると、ミケが“お決まりの癖”を披露してくれた。
ースンスンー
「え、あ、あの……」
がたいのいい長身の男に匂いを嗅がれて驚かない人間はマズいないだろう。