第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第4章 第四章「第八深淵少女」
「ほら、また何か考えてるだろ。可愛い顔が、そんなに強張っちゃ勿体無いぞー。」
リア姉は、既に私の心の中を覗いているような表情で私を見る。私の頬を手で掴むと、解すように弄り回す。私の心は、もうどうでも良くなったのか、蓋をそっと開いて笑みを零した。
「ふふ、もうっ早くお風呂入ってご飯食べよっ。」
「うんっ、そうだな。」
扉に向かうリア姉の身体は、上下に揺れる。でも、この温もりを覚えている私の身体はすっと解けた。
「...ありがと。お姉ちゃん...。」
やっぱり、リア姉...、お姉ちゃんが大好き。私もこんなに温かい人たちに大切にされていて良かった。そう考えると、自然と身体が、気分が楽になる。...。朝食...、いや昼食はなんだろう...。きっと、温かくて美味しいものなんだろうな。うん。...早く食べたい。
脱衣所に入ると何故か、肌に風が当たっているような感覚を感じ取る。熱でも上がったのかと額に手を当てる。でも、自身の身体が温かいのだから、違いが良く分からない。しかし、その額に当てる右腕に眼を向けた時に、私は全てを悟りリア姉に眼を向けた。
「もうっ、お姉ちゃん何してるの...。」
その手には、私の寝間着である全ての衣服がしっかりと握られている。眼が合うと、惚けて誤魔化し笑っている。だから、私は凍る程冷たい視線をリア姉に送った。
「だって、早くご飯、食べたいんだろ? だったら、服脱ぐのに時間掛けてたら餓死しちゃうから、私が脱がしたの。」
そう自信満々に、言い訳を楽しそうに語る。ここまでくると、叱るに叱れない。それを分かっての行動だから、もう何も言えない。
「流石にそこまでお腹空いてないから...。」
そう、失笑した。
「よし。一人で歩けそうか?」
リア姉は、膝を曲げて下ろし、ゆっくり私から手を離す。しかし、立つ感覚が上手く掴めずどうしてもふらついてしまう。
「大丈夫か? そこに座って待ってて。」
私は、背中を支えるリア姉の手に体重を掛けて竹椅子に座る。見上げると、リア姉は私を見下ろし頭に手を添えた。
「今そんな状態だから、本当だったらもう少し休んでもらいたいけど、次の仕事は、どうしてもフィの手を借りたいものだからな。」
リア姉は、服を脱いで軽く畳んで、私の服と一緒に収納棚の竹籠に入れる。