第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第4章 第四章「第八深淵少女」
「ふ...、そうだな。手伝おうか?」
リア姉は、釦に手を掛けたまま動かない私を見て勘違いでもしたのか、リア姉は手を伸ばして一つずつ外していく。それを見ていて気付いたのだが、私は確か登山服を着ていた筈なのだが、いつの間にかに兎の柄の入ったピンクの寝間着に変わっていた。それを認識してから、先程まで恥ずかしく思っていた自身が少しずつ消えていって、温もりのある安心へと変わっていった。
「本当は、さっき着替えさせた時に一緒に身体まで拭きたかったんだが、起こしちゃ悪いからな。」
リア姉は、先ず私の上体をの寝間着を脱がすと、軽く畳んでからタオルを手に取って木桶に入れた。よく見ると木桶からは湯気が立っていて静かに水の音がした。
「さっき言い逸びれたが、次の仕事まで少し期間が空いているから、暫くの間残りたかったらこの世界にいても良いからな。」
リア姉は、お湯に浸かったタオルを取り出して、軽く絞る。そのタオルから滴り落ちる水の音に、心が和む。
「少し熱かったらごめんな。」
リア姉は、タオルを冷ます為に広げて軽く波打つように振る。そうしてから、タオルを私の背中にそっと掛けた。
「どう? 熱いか?」
リア姉は、タオルの上から軽く背中を叩く。
「ううん、温かくて気持ち良いよ。」
私は自然に眼を閉じて、そう答えた。少し経つと、リア姉はタオルを取って優しく背中を拭き始める。その所為で、少しばかりリア姉が拭く背中が痛んだが、このくらいは我慢する事にした。
「ねぇ...、お姉ちゃん?」
「...どうした?」
リア姉はタオルを取り、再び木桶に浸けて濯ぎ始めた。
「水月ちゃんの事なんだけど...。メレンスに行ってみたいって言ってて。...良いかな?」
その言葉は、日常の一日に溶け込む程の自然な会話のように発せられた。
「その事なら、既に本人から聞いてるよ。」
リア姉は、タオルをもう一度絞り、今度は前に掛けて叩く。
「その娘本人から頼まれなかったら、少し考えるところだったが、当本人から頼まれたものだから直ぐに了解したよ。まあ、三か月後にはなるんだがな。」
リア姉の言葉に安心して微笑んだが、即決した事に対する不安感もあった。
「でも、他世界に干渉するのは駄目なんじゃ...。」
そう言うと、リア姉は吹き出して笑う。