第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第4章 第四章「第八深淵少女」
「それで話ってどんな事?」
リア姉は、水月ちゃんを挟んだ私の向かいに横になる。そう私が問い掛けている時に、リア姉は大きな欠伸をしている。私が気を失っている間、ずっと傍にいてくれていたから、眠たいのだろう。小さい頃、私が熱を出した時にリア姉がいつも介抱してくれていた事を思い出す。身体が弱かった私は、良く小さな事で怪我や病気に掛かっていた。リア姉は、そんな私を知っていて、どんな小さな些細な事でも気を配って、いつも面倒を見てくれていた。リア姉は、余り自身の感情を表に出さないが、陰で見守ってくれて、私が助けを求めた時には快く接してくれた。時々、それが逆になる時も何度かあったが、今でも頼りになる一人のお姉ちゃんである事には変わり無い。余りそれを本人に伝える事は出来ないが。
「あ、ごめん話の事な。話す事は今回の仕事の事と、もう一つが次の仕事の事と二つあるんだが、どっちから先に聞きたい?」
リア姉は、寝ている水月ちゃんの事を考えて、声量を落として話す。もう次の仕事がある事に、高揚感と不安感の二つを感じた。
「んー、じゃあ今回の仕事の事から聞きたいかな。」
順を追ってから聞きたいと思った私は、当然ながら前の方を選ぶ。
「分かった。じゃあ今回の事なんだが、依頼された事はもう終わったんだよな? さっき聞いた気がするが。」
「うん、数日以内にメイドさんの方から報告がある筈だから、問題無いと思うよ。」
私は、そう言って返した。
「じゃあ、それに目を通してからだな、最終報告書は。」
リア姉は、仕事が終わり安心しているようだったが、少し首を傾げた様子でもあった。
「でも...、今回の事ってどういう事だったんだ? 別に私たちに要請するような内容じゃ無かったろ? 自ら悪事をばらしたように思えるんだが。」
言われてみると、そうとも思える気がしてきた。結局は自身がしてきた悪事を、自ら教えて発覚したものである。隠し通すとしたら、もっと上手く隠すために今回の要請を出さなかった筈。何処か引っ掛かるものがある。