第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第4章 第四章「第八深淵少女」
「残りの滞在時間は僅かしかありませんが、困った事がありましたら、遠慮無く私に言って下さいね。」
私がそう言うと、風花ちゃんのお母さんは頷くように返事をして、元来た道を風花ちゃんを抱えて帰って行った。私も、早くお風呂に入らなければ。
「じゃあ、私はこれからお風呂に入るけど、リア姉はメレンスに帰るの?」
すると、リア姉は怒ったように口角を上げて笑い、私の頬何度も優しく引っ張ってくる。
「さっき話した事、もう忘れたのか? 話す事があるって言ったろ。」
「じゃあ、一緒に入ろっか、お風呂。話ならその時に聞くよ。」
私は、頬を掴むリア姉の手を取り払って、抱き付く。
「...ん、何だ? 急に。」
リア姉は、不思議そうに私を見つめる。それでも私は、水月ちゃんみたいにリア姉の顔を見つめ返した。
「連れてって―。」
そう言って、リア姉の首に輪をつくる。
「分かった。ちゃんと掴まってろよー。でも大体、お...ろの......な.........。」
リア姉の言う通りに、しっかりと力を入れて掴まろうとしたのだが、どうしても十分な力が入らない。それに、身体が火照るように熱くなっている。このまま溶けてしまいそうな意識の中、身体が横にゆっくりと倒れた気がした。
重い意識の中、瞼を開き首を起こすと、顔が曇り歪んだリア姉の顔と声らしきものが、拒絶する私の頭を満杯に溢れさせた。
「...良かった。...急に倒れるものだから、驚いたよ。こんなになるまで、何時から無理してたんだ?」
リア姉は、自身の感情を抑えてまでも私に気を遣ってくれたのか、小さな声で心配する声を掛けてくれた。何か身体がいつも以上に重い事に恐怖を感じ、視線を自身の身体に落とすと、水月ちゃんが私に覆い被さるように寝ているのが確認出来た。それを見て、少しばかりだが心を落ち着かせる事が出来た。
「へへぇ...。ごめんね。ヴァール城に向かっているくらいから、身体が重たかったかな。」
身体的にも少し余裕が生まれた為、周囲の状況を確認する。すると、先程までフェッセルン山の寺近くにいた筈の苣清さんが、木製の椅子に腰を落ち着かせていた。
「どうして、苣清さんが来ているんですか?」
そう言うと、苣清さんは少し嘲るように笑う。