第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第4章 第四章「第八深淵少女」
私はそれから良い時間、三人で遊んで過ごした。最初は楽しそうに燥いでいた風花ちゃんも、疲れが溜まっていたのか口数が少なくなり、反応が鈍くなってきている。すっかり表情はお休みモードに見える。そんな風花ちゃんを抱えて、撫でながらお母さんの迎えが来るのを待った。
「あらあら...、風花寝ちゃいましたか?」
迎えに来た風花ちゃんのお母さんは、身体に凭れて眠る風花ちゃんを見て微笑んでいる。
「はい。流石に疲れてしまったのか、ぐっすりです。」
風花ちゃんのお母さんは、寝ている風花ちゃんの乱れた髪を整えて、頭を撫でている。
「この娘、こうやって疲れて眠っちゃうから、夜中に眼を覚まして私を起こすんです。だからお風呂は毎回夜中になっちゃうんですよね。」
風花ちゃんのお母さんは、そう溜め息混じりに笑う。そうだとしたら、お母さんはしっかりと睡眠を取れているのだろうか。
「お体には気を付けて下さいね。それは、風花ちゃん次第になってしまうと思いますが。」
私は、冗談を混ぜてそう話した。これは風花ちゃんのお母さんにとって、一つの悩みの種になっているだろう。
「ふふ、ありがとうございます。」
風花ちゃんのお母さんは小さく微笑み、風花ちゃんに視線を落とした。そのお母さんの眼には、少しの疲労が見える。我が娘を慈しみ育てているのだろうが、疲労があっては気が混じるようだ。これは少し、私の立場からして考えるものがありそう。
「風花ちゃん...。帰ったら、ちゃんとお風呂入るんだぞ...。」
そう小さく囁いて、風花ちゃんのマシュマロみたいな頬を突く。すると、眠っている風花ちゃんが、少し笑ったように見えた。私は、そのまま迎えに来たお母さんに引き渡す。
「遅くまで、風花の面倒を見て下さってありがとうございました。」
「いえ、私も楽しい時間が過ごせたので良かったです。」
すると、風花ちゃんのお母さんは一瞬だけ眼を大きく開いた。
「そう言えば、お二人はツェントルムでしたね。お忙しいでしょうに、ありがとうございます。」
そう言って、小さく頭を下げた。
「ツェントルムの仕事も、そこまで忙しくは無いですよ。こうやって色々な人とお話出来る、楽しい仕事ですから。」
私は、続けて話す。