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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第4章 第四章「第八深淵少女」


「あ...うんっ、分かった。風花ちゃんのお母さんが来た時の為に戸の鍵は開けておいてね。」
そうとだけ言い残して、水月ちゃんは手を振りながら壁の死角に姿を隠した。私が村に来てから、水月ちゃんと気が付けば毎日一緒にお風呂に入っていた。お風呂に入りながら、二人で時間を密かに楽しんでいる水月ちゃんからすれば、今日初めて断られた事を少し憂鬱に思っているのかも知れない。
「”今日は”って、他の人と一緒に入ってて大丈夫だったのか?」
深刻な面持ちで訊いてきたミシアちゃんに対し、軽い口調でリア姉は訊いてきた。水月ちゃんと私の二人の会話の中から、そのような抵抗感が感じられないから、リア姉は答えを知った上で軽い口調で訊いたのだろう。
「最初は勿論驚いたけれど、毎日一緒に入っているから何か慣れちゃったかな。」
私がそう言うと、リア姉は安心したのか少し微笑した。
「それなら良かった。」
リア姉とそんな会話をしていると、風花ちゃんは私の胸元を軽く叩いて視線を変えさせようとする。
「早く遊ぼー...。」
風花ちゃんは、少し頬を膨らませて怒っている様子。風花ちゃんには饗宴の日から散々待たせてしまった。仕事が理由とは言え、反省すべき事だろう。
「うん。じゃあ、自分の靴はちゃんと持ってね。...って、もう渡してたね。」
私は少し吹き出すように、一人で笑う。自分の白のスニーカーを手に取り、風花ちゃんの背中とお尻を支えてゆっくりと立ち上がる。
「あれっ、私の靴は? えっ、渡してくれないのっ?」
リア姉は少し戸惑いながら靴箱から自身の靴を取り出した。
「ふふっ、リア姉は自分でも取れるでしょ。風花ちゃんは取り出しにくいから取っただけだよ。」
私は靴を持つ手を変えて、引き戸の鍵を上げた。風花ちゃんのお母さんが来る正確なさせてあげよう。少し身体が重く感じるが、このくらいなら大丈夫。何かあった時は、近くに信頼出来る私のお姉ちゃんがいるんだから。
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