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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第4章 第四章「第八深淵少女」


 水月ちゃんと緑針さんが作ってくれた夕食は非常に美味しくて、お腹の空いていた私を満たしてくれた。夕食を終え、私は少しの休憩を取っていると、風花ちゃんが私の上に勢い良く飛び込んできた。その衝撃で、私のお腹に想定していない不必要な痛みが掛かり、倒れ込んで静かに痛みを耐える。
「...ん? フィレアさん、どうしたの?」
何処からか、私を心配している風花ちゃんの声が聞こえる。このくらいまだ幼い娘なのだから、力の加減が上手く出来ないとだけだと思い、自身を誤魔化せば良い。今は、痛みに耐えて、静かに身体を起こす。
「う、うん...大丈夫だよ、私は。」
風花ちゃんはそれを聞くと、何事も無かったように再び乗っかる。風花ちゃんは、白い歯を出しながら私を掴んでは、左右に揺さ振り始めた。
「フィレアさーん、あーそーぼっ。」
風花ちゃんは私の手を掴むと、障子を突き破る勢いで、縁側まで両手で無理矢理引っ張り進む。私は引き摺られながらも、必死に風花ちゃんに付いて行った。昼間、緑針さんと遊んでいた娘が、何故夜になっても遊ぶ余力が残っているのが、とても不思議でならない。ミシアちゃんが、風花ちゃんみたいな娘を何人も一人で相手していたのを想像すると、身体が震え出す。じゃあ、そんな娘たちと毎日楽しそうに遊んでいる緑針さんって、一体何者なんだ...。
「何して遊ぶの? 二人だとやれることも限られるよ。」
正直、活発な娘と二人で遊ぶなどした事は無いし、その上遊びになど知らない私からすれば、即興で思い付くものでも無い(幼少期の記憶は何処に?)。そんな事を思いつつ風花ちゃんの様子を観察していると、その自分の世界に隠れた視線をゆっくりと上に上げては、月のように眼を輝かせた。
「三人なら、やれる事も増えるんじゃないか?」
いつの間に私の後ろには、リア姉が立っていた。リア姉は、私の隙を見つけては脇腹から手を通して、衣服みたいに私を覆い温めてくる。
「じゃあ、玄関から靴を持って来ないとねっ。」
そう言って私は、衣服を払い落として風花ちゃんの右手を取って玄関に向かう。
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