第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記
第4章 第四章「第八深淵少女」
「もう...、して欲しかったら口でものを言わないと分からないよ?」
水月ちゃんは、私の前にハンバーグを運んで口を開いた。この時点で漸く私は、水月ちゃんが勘違いをしている事に気付いた。別に二度目だから嫌な気はしなかったが、リア姉には見られるのだけは嫌だから、眼を逸らして確認すると楽しそうに緑針さんと話しているようだった。これはこれで気が立って、リア姉の頬を後ろから引っ張りたくなるが、今は止めておこう。水月ちゃんの方に向き直り、素直に口を開くと、水月ちゃんは優しく口に運んだ。
「......。本当に初めて作ったの? 味はしっかり調っているし、お肉は柔らくて美味しいよ。」
「本当っ!?...やったっ。」
水月ちゃんの喜んでいる姿に、笑みを零していると、何かの視線を感知した。反射的にその方向確認すると、リア姉と緑針さんが満面の笑みで私たちの事を見ていた。この人たち、確信犯だ。
「何かその娘を私に預けた時可笑しいと思ってたけど...、ふふ。」
リア姉は、耐え切れなくなった感情を吹き出して笑う。...もう、何も言いたくない。
「大丈夫だよ、メグ姉には言わないでおくから。」
リア姉は、軽く笑いを挟みながら話していて、とても信用ならない。
「それ、絶対言うでしょ。お姉ちゃんがそう言って、一度も言わなかった事無かったよねっ?」
私は、そうリア姉に怒るが、その気力が無駄な気がして顔を落とす。
「よしよーし...。」
水月ちゃんは、慰みのつもりで私の頭を撫でてくれる。すると、もう一つ手が生えてきて撫で始めた。誰かと思い、手の元を眼で追うと風花ちゃんだった。
「私もーっ。」
「うぅ...風花ちゃんまで...。」
私は、もう自棄になって、水月ちゃんの胸元に顔を埋めた。赤く火照っている顔を、余りリア姉に見られたく無かったから。