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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」


「...私は、決して許されぬ罪を犯しました。二人には、竹華ちゃんの事について、あの日雨で増水した川に流されて亡くなったと、死因は溺死だと伝えました。あれは、全て嘘です。それは、あの日より前に、計画されていた話です。過去の事件で、多くの亡くなられた方の霊の塊、怪異に頭を悩ませていました。その会議で挙がった案が、生贄を怪異に捧げるというものでした。その案に、皆は反対でしたが他に良い案が何も出てこなかった。私は、その案を採用し、早速適合者を探す事になったのです。そこで出てきたのが、誰でも無い竹華ちゃんだった。麻痺した私たちは、それをすぐに実行に移しました。それが、あの大雨の日でした。」
空木さんは息を大きく吸い、膝を付き頭を床に下げた。
「これは、到底許される罪ではありません。人の命を軽々しく奪った挙句、隠蔽工作まで行いました。大変...、申し訳ありませんでした。」
空木さんは、一分近く頭を下げていた。空木さんが頭を上げると、我慢する事が出来なくなった緑針さんは、空木さんの後頭部を勢い良く踏み付けた。
「誰が...誰が頭を上げて良いと言ったっ! お前はもうっ、死んで償わなきゃ分からないんだよなっ。だから、ばれるまで離さなかったんだろっ。だったら、私が殺してやるよっ!竹華の苦しみを、お前にも味合わせてやるよっ。」
緑針さんは、空木さんの髪の毛を強く引っ張り、無理矢理立ち上がらせて腹を力強く殴った。無残に、引き抜かれた髪の毛が宙を舞う。空木さんは、床に勢い良く倒れ込んだ。
「んっ、駄目っお姉ちゃん、ふ、復讐は何も生まないのっ!」
水月ちゃんは、さらに空木さんに暴行を加えようと、手を振り上げた緑針さんを必死で止める。私は、それを見ても何も出来なかった。これは、彼女たちの中の問題な気がしたから。私が、深く関わるべきで無いと感じたからだ。
「水月は良いのっ?大切な家族を、こんなくだらない理由で奪われて、何も思わないのっ?」
「良くない、良くないけど...、さらに積み重ねても竹華が悲しむだけだよ...。」
緑針さんは、声を荒げて水月ちゃんを振り払おうとするが、水月ちゃんは絶対に離そうとしなかった。
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