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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」


「ごめんね、時間通り戻れなくて。水月ちゃんが作ってくれたご飯の後にでも、一緒に遊ぼっか。」
「うんっ、フィレアさんの言う通りにする。」
そう言うと、風花ちゃんは素直に応じてくれた。そっと風花ちゃんを抱え上げて、優しく頭を撫でる。そうしながらも、私と空木さんはキッチンの方へと続く一本道を歩く。どんな顔をして、水月ちゃんに面と向かって接すれば良いのだろうか。積み上げる事だけは、絶対にしたくは無い。
「あれっ、...フィ、帰って来たんだ。」
その声に、顔を上げると料理を載せた盆を手にした水月ちゃんが、朗らかな笑みで迎えてくれた。
「うん。水月ちゃん...、ただいま。」
私は、挨拶を返す事だけで精一杯だった。それ以外に、何もすることが出来ない。それが、嘘みたいだった。
「空木さんの所に行って来たから、遅くなったのかな。風花ちゃん、ずっとそわそわして、落ち着きなかったんだから。」
そう言って、水月ちゃんは暗闇に声を小さく響かせた。
「あのね、水月ちゃん。少し頼みがあるんだけど、お姉さんを呼んで来てくれないかな。」
「ん、お姉ちゃん? 別に良いけど。ちょっと待っててね。」
「うん、ありがとう。」
水月ちゃんは、縁側の角を左に曲がりキッチンに向かった。ここからでも、キッチンの中が竹窓の先に見える。そこに、緑針さんは見えた。ここからは、私が引っ張るべきでは無いだろう。私は、後ろに下がる事にした。
「すみません...。」
空木さんは、そうとだけ呟いた。
 少しの時間が経った頃、二人はキッチンから出て向かって来る。私は、唾を深く飲み込んだ。
「あれっ、空木まで一緒で。あっ、異変が解決したって事ですか?」
緑針さんは、少し落ち着いたようだった。
「緑針さん、そして水月ちゃん、空木さんの話を聞いてあげて下さい。私は、何も言いません。」
私がそう言うと、二人は暫く何の事か分かっていないようだった。空木さんは、少し前に出て、固く縛られた自身を開いた。
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