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第零世界「メレンス」ースカ―ヴァイス・フィレアの章 始記

第3章 第三章「魑魅魍魎の忘却曲線」


「貴女に...あなたに、人の情は無いんですかっ?彼女たちの、絶望と苦しみは計り知れません。貴女はそういうものを、小さな命を、その手で軽く奪い取ったんですっ。水月ちゃんが、私が何と言おうとも、竹華ちゃんが帰って来る事はありません。水月ちゃんは、今でも自身の所為だと、自分を責め続けているんです。真実を知った水月ちゃんが、どんな気持ちでこれからを生きていくと思いますかっ? ...いや、心の無い、貴女に訊いても無駄な事でしたね...。貴女の...空木さんの犯した罪は、天秤では到底図れないものです。貴女の犯した大罪を胸に、これからの生涯、それ以降も贖って貰いますからね。...私からの話は以上です。会議の準備でもされたらどうですか?」
私は、涙を裾で拭い、握る手を離す。空木さんの視線は、何処か遠くを見ている。その眼には、一体何が映し出されているのだろうか。いや、考える必要は無いだろう。それは、これから分かる事。私は、次の事に頭を集中させよう。
「これで、貴女にはもう話す事はありません。これから、多くの調査員がこの城を埋め尽くす事になるでしょう。その空っぽな心の片隅に、刻んでおいて下さい。貴女には簡単な事ですよね。では。」
私は、そうとだけ言い残し、空木さんに背を向け、空虚な部屋を後にした。
 廊下を、一歩...一歩と刻み歩く。それは必然とされた音。背後から、扉が開く音が聞こえる。彼女の答えが分かる時。どちらに踏むか、分からない。彼女に、少しの善の水滴でもあれば...良いのだが。
「フィレアさん...待って下さい。」
空木さんは、私を呼び止める。彼女の表情を見て分かった。少しの善の気持ちは、彼女にある事を。
「乞いは、これ以降聞きませんよ。返答次第で変わりますが。」
「...フィレアさんに、付いて行かせて下さい。私は、酷い過ちを二度も犯しました。それを、謝らせて下さい。」
空木さんは、深々と頭を下げる。この状況に、周りにいるメイドさんは、口を開いて唖然としていた。彼女が善者に戻れる事を願うばかりだ。
「えぇ、分かりました。行きましょうか。道は長いです。その間に、自身を見つめ直していたらどうですか?私は、話し掛けませんから。」
「...はい。」
空木さんは、小さく頷いた。
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